駅で買えない&大会でもほぼ見かけない 広島「幻の駅弁」とは? 歴史は120年!
120年以上の歴史がある名物
駅弁の始まりは諸説ありますが、1885(明治18)年の宇都宮駅での販売開始を起源とすると今年で139年になります。ただ、その販売駅は2016(平成28)年の170駅に対して2021年では147駅となるなど、販売駅は年々減少しているのも事実です。 近年の駅弁廃止駅の中には、西九州新幹線の始発駅である長崎や、乗車人員5万2275人の平塚(神奈川県平塚市)などの主要駅も含まれています。百貨店などのいわゆる駅弁大会は盛況ですが、駅弁がコンビニや外食産業の充実に対抗しきれていない現状を示しているともいえます。 そうした駅弁斜陽時代において、新幹線停車駅でも特急停車駅でもない駅弁なのに、駅弁大会に出品すると目玉企画扱いされる駅弁があります。JR山陽本線の宮島口駅(広島県廿日市市)の駅弁「あなごめし弁当」です。 (写真)これが幻の駅弁「あなごめし」時間経つとなお美味い! 農林水産省によると、そもそも「あなご飯」の発祥地は宮島口であり、山陽本線が私鉄の山陽鉄道として開通した4年後の1901(明治34)年に、宮島口駅近くで駅弁として販売したものを始まりとします。周辺ではあなごがよく採れ、江戸時代の『芸藩通史』でも阿奈吾(あなご)について、「当島辺りの産、味かなりとす」と伝えられているほどです。
製造元「うえの」の説明だと?
宮島周辺は瀬戸内海でも潮流が速いため、風味、柔らかさに優れ脂も乗っていることから「瀬戸のアナゴ」として珍重されていました。今や学校給食として提供されるほどの名物料理となっています。観光バスが宮島口に大挙して訪れた1950年代では、駅弁としてだけでなく「バス弁」としても人気になったといわれています。 さて、そうした宮島口駅の伝統駅弁ともいえる「あなごめし」ですが、製造元である「あなごめしうえの」の説明は農林水産省とやや異なり、山陽鉄道宮嶋駅(現・宮島口駅)が開業した1897(明治30)年に、上野他人吉が駅売弁当として販売したのが始まりとしています。 当時、地元料理として「あなごどんぶり」があり、他人吉が「白飯をあなごのアラで炊きこんだ醤油味飯」に置き換えたところ、コクがあると大評判になったのです。 それ以来、宮島口駅弁として販売された「あなごめし」は宮島だけではなく、広島市内でも広がりを見せました。駅弁としては宮島口駅のほかに広島、三原、岡山、高松、今治、姫路の各駅でも販売実績があります。その元祖ともいうべき「うえの」の「あなごめし」は、ラインナップを増やさずに「あなごめし」だけを販売しており、その製法も他人吉以来の伝統を守っているという名物駅弁なのです。