堂本光一、コロナ大打撃から生まれた『―Eternal』ピンチはね返すパワー「それは奇跡のような瞬間でもあったりするんですよ」【単独インタビュー(2)】
11月29日をもって24年の歴史に幕を下ろしたKinKi Kidsの堂本光一(45)の主演ミュージカル「Endless SHOCK」を本紙の単独インタビューで振り返る3日間連続の連載企画。2回目の今回は、「ショー・マスト・ゴー・オン(なにがあってもショーは続けなければならない)」という作品テーマを地で行くように、光一は訪れたピンチをどうチャンスに変えたか。そして大千秋楽の第2幕のクライマックスシーン「夢幻」にまつわる秘話を取り上げる。 2020年から始まった新型コロナウイルスの感染拡大はエンタメ界に大打撃を与えた。「SHOCK」も同年は2月4日に開幕したが、帝劇公演は同26日以降すべての公演が打ち切りとなった。9月に梅田芸術劇場で開催予定の大阪公演をどうするか。座長の光一は熟考の末、中止ではなく形を変えて何かをやろうと決断した。 そこで自ら脚本を書き上げて誕生したのが、主人公コウイチが天国に旅立った3年後を描くスピンオフ版「Endless SHOCK―Eternal」だ。感染対策のため、客席上空のフライングを中止し、一部演出も映像で再現するなどし、最小限の機材とスタッフで最大限の公演を実現させた。 もともとは感染対策ありきで生まれた作品だったが、登場人物それぞれの心情を深く描いており、掘れば掘るほど愛着が増していく。22年から本編の上演が再開されたが、「『―Eternal』を通して『SHOCK』という作品が完結する」との思いで、昨年からは本編と「―Eternal」を同時期に2作同時上演してきた。 「『―Eternal』自体、自分はすごく好き。見る側にとっては常に悲しみをまとった構成になっている。本編の方がいいっていうご意見もあるんでしょうけど、自分は根が暗いので(笑)。本編はファンタジーですが、『―Eternal』はすごい現実を突きつける内容になってるんですよ」 ピンチのときこそ、”チームSHOCK”は強くなる。思えば15年には舞台装置が倒れ、出演者やスタッフら6人がけがを負う事故もあったが、翌日に公演を再開したときもそうだった。 「こういうときに生まれるエネルギーってすさまじい。それは、奇跡のような瞬間でもあったりするんですよ。そういう瞬間を何度も経験してきた。自分の人生においても、『楽しい』とか『苦しい』とか『痛い』とか『悔しい』とか『幸せ』だとか…もしかしたら人の一生分をこの作品の中で全て感じているんじゃないかなっていうぐらい、いろんなことがあったので」 そして光一はこう言葉に力を込めた。 「今、『奇跡』って言いましたけど、実はやっぱり『人の思い』なんですよね。ただ奇跡を待つだけじゃ何も生まれない。コロナ禍のときは、(政府が示す)ガイドラインがなかなかできず、『本当にこれでいいんだろうか?』とかいろんなことを悩んだ。その中でも、『やれることはやっておこう、動いておこう』って。そんな中から『―Eternal』は生まれましたから。思い入れのある作品になりました」 大千秋楽でもすさまじいエネルギーが生まれる場面があった。第2幕の最大の見せ場「夢幻」では、主要キャストが心を一つにして一糸乱れぬダンスを完璧に披露。光一はかつて見せたことのない鬼気迫る”どや顔”でアピール後、一人一人を肘タッチでねぎらう姿が観客の涙を誘った。しかし、光一の口から「あれは演出でしたけど、失敗です」と衝撃的な言葉が飛び出した。 「ブロードウェーやウエストエンドでは、演劇の途中だろうがなんだろうが自然発生でスタンディング(オベーション)になったりする瞬間があるんですが、日本って絶対ないんですよね。『夢幻』はストーリー的にもコウイチの命が消えていく前に最後に輝きを放つ場面。その瞬間に客席も全てが解き放たれるような瞬間を望んでたんですけど、そうはならなかったっていうオチですよ。ファンが泣いていた? 知りません、そんなの。あれは大失敗です!」 光一によると、過去にはそのようなことがあったらしいが、立ち上がった人たちが周囲に「ちょっと見づらいじゃない! タイミングそこじゃないから!」などと怒られたのだという。 「『なんであなたがそれを決める?』って俺からしたら思うんですよ。もちろん、何をしたっていうわけではないですよ。だけど心が動いたときには立ってしまったり、自由にしていいと思うんです」 ミュージカルの世界で場数を踏んできたからこそ説得力のある言葉だった。光一が次の新たなるステージに立つ際はファンの皆さま、ぜひご参考に―。
中日スポーツ