<衆院補選>ほころび見えた野党共闘 解散機運は加速も
自民党が2勝して終わった衆院補選。いずれも野党統一候補を破っての勝利でした。安倍晋三首相の解散戦略や野党協力のあり方への影響が注目されていましたが、今回の補選をどう見るか。政治学者の内山融・東京大学大学院教授に寄稿してもらいました。
小池劇場と鳩山ブランド
10月23日に東京10区と福岡6区で衆院補選が行われ、両方で自民党系候補が勝利した。 東京10区では、自民党の若狭勝氏が民進党の鈴木庸介氏らを破った。若狭氏の勝利は、小池知事を支持する有権者の票が取れたことが大きい。若狭氏が東京都知事選の際に党本部の指示に反して小池百合子氏を支持したという経緯から、小池知事が若狭氏の応援の前面に立っていた。しかも同区はもともと小池氏の地盤である。このような点から、同区の補選結果は、政権への信任というよりも、小池効果が強かったことを示すといえるだろう。 なお、東京10区の投票率は34.85%であり、前回衆院選を18.71ポイント下回るものだった。候補者本人よりも「小池劇場」が前面に出すぎたために、選挙そのものに対する有権者の関心が低下したのかもしれない。自民党都連の中には若狭氏に対する反発がまだ強いようなので、自民党内のそうした混乱が影響した可能性もある。 福岡6区では、自民党系無所属の鳩山二郎氏が、やはり同党系無所属の蔵内謙氏らを破り圧倒的な勝利を収めた。この選挙区は亡くなった鳩山邦夫氏(二郎氏の父)のものだったので、「鳩山ブランド」の強さがいかんなく発揮されたと見るべきだろう。 自民党は、鳩山氏と蔵内氏の公認調整ができなかったため、両氏を無所属として争わせて勝った方を追加公認する、という方策に出た。このような追加公認の手法は昔の自民党の常套手段であったが、こうした手法は、自党公認候補が落選するリスクを最小化し、自党議席を確保する上で効率的な手法である。同区の自民党勝利は、ブランド効果に加えて周到な戦略の帰結であるといえよう。 以上から、今回の二つの補選で自民党が勝利したからといって、自民党自体への支持の強さが示されたものと単純に見ることには慎重になるべきではないか。