<衆院補選>ほころび見えた野党共闘 解散機運は加速も
年金問題は「鬼門」
この臨時国会での最大争点はTPP(環太平洋経済連携協定)である。日本農業に悪影響が出る懸念があることや、交渉過程が不透明だったことから、民進党は審議に慎重な姿勢を示している。 年金も争点となろう。政府提出の年金制度改革法案には賃金下落に合わせて年金額を下げる内容が含まれているが、民進党はこれを「年金カット法案」として批判している。第1次安倍政権も年金問題で打撃を受けたことから、年金問題は安倍政権の「鬼門」であるとして、民進党は攻勢をかけるようだ。 安全保障関連法に基づく新任務である「駆けつけ警護」の付与も、与野党攻防の焦点である。南スーダンに派遣される陸上自衛隊への同任務付与が検討されているが、同地では軍事衝突が頻発していることから、民進党は慎重な姿勢を示している。 こうした争点で民進党はじめ野党陣営がどこまで攻めきれるか、懸念も残る。TPPは野田政権が交渉参加の方針を表明しており(実際の交渉参加は安倍政権)、民進党としては反対を貫くのも苦しいところであろう。経済連携強化による経済成長や安全保障の実現といった課題に対して、説得力ある方針をどのように打ちだせるかが問われる。 また、安倍政権は同一労働同一賃金や長時間労働規制などの働き方改革を掲げており、これまで労働政策を重視してきた野党はそのお株を奪われた形である。民進党がこうした点でもどのように対抗軸を立てていくのか、注目したい。
--------------------------- ■内山融(うちやま・ゆう) 東京大学大学院総合文化研究科教授。専門は日本政治・比較政治。著書に、『小泉政権』(中公新書)、『現代日本の国家と市場』(東京大学出版会)など