定年シングル女性に家は買える?長女はつらいよ、ローン撃沈でお先真っ暗!真面目に働いても、定年で「無職のシングル女性」に
◆35年以上真面目に働いてきたのに 「知らなかったから、もうショックで」 そもそも、住宅ローンの返済期間は最長79歳11ヵ月までなので、あと20年ちょっとしかありません。返済期間が短いイコール借り入れ枠は小さくなります。そのうえ、他のローンがあることで銀行から住宅ローンで借りられるのはすごく少ないことを、仲介業者との面談の中で知らされました。せっかく大企業に勤めているのに。途中で転職もせず、35年以上真面目に働いてきたのに。それでも、祥子さんは、少ない予算の中でマンション探しを始めました。 地元に戻る気はなかったんですか?「ないね。だって、戻ったら、あのきょうだいたちに……」。長女として、頼られることは目に見えています。バリバリ稼いだ亡き母に替わって、自分が経済的にも面倒を見ることになるでしょう。実家には、通えるうちは時々通って、庭の手入れをして母の思い出に浸るつもりです。でも、ずっと住もうとは思いません。祥子さんは苦笑します。 「友だちにも言われるの。祥子さん、お願いだから自分のために生きて、って。自分のためにお金使って、って」 予算的には、「終の住処」はほかの地方で買っても良いのでは?――実は考えたそうです。仕事でご縁のあった土地なら、知り合いもいます。「おいでおいで、って言ってくれるのよ」。でも祥子さんは運転免許は持っていません。「車がないとつらいでしょう」。車がなくても過ごせる地方都市となると、コンパクトシティで有名な富山はどうでしょう。「それも考えた。富山いいよね。でも、私、雪はきらいなの」。雪国出身の祥子さん、雪かきや雪下ろしの面倒はよく知っています。というわけで、結局、いま仕事もある東京に、会社員のうちにローンを組んで買う、という選択肢に落ち着いた訳です。
◆探せば見つかるかもしれない 祥子さんはすでに2回、内見に行きました。予算が少ないので買える物件はないかもと危惧したけれど、それなりに見つかりました。1つ目は、小さい古いマンションでした。狭いけれど、予算内で買える物件が都内にあった、と分かって、少しほっとしました。探せば見つかるかもしれない、と希望が持てました。 もう1つは、「なに、いま夜逃げしたの?」って思うほど、残置物が残ったままの部屋でした。地下鉄駅徒歩10分で、北向き1階でしたが、キッチンが広いのが気に入りました。コロナ後、自宅で自炊することが増えて、祥子さんは料理に目覚めました。ワンルームでもいいけれど、コンロが一口しかないのはイヤでした。不動産に詳しい年上の女友だちに、この物件のことを相談したら、目をきらりとさせて、「いいかもしれない」と言われました。「どうせ年を取ったら階段じゃないほうがいいんだから、1階はあり」と言われ、そうか、と納得。いざ申し込もうと思ったら、そこで不動産屋から「残念ですが、売れてしまいました」と言われました。競合は現金買いだったそうです。残念。 「私くらい少ない予算の物件になると、投資家が現金で買えちゃうのよね。現金には負けるから」 そう。不動産売買は弱肉強食。現金買いに勝る者はいません。ローン審査を待つこともない、即金ですぐ契約が成立する現金買いを選ばない売主なんていないでしょう。 祥子さんはとりあえず、ローンの事前審査を出しました。ローンがつかないと買えませんから。そこで、冒頭の事態です。日常的にお付き合いのあるメーンバンクに断られたのです。「手紙が届いて、何かと思ったら、ペラペラの紙切れ一枚で、事前審査の結果、落ちました、って」。祥子さんは憤ります。もう銀行を替えてやる、と。