「めっちゃ笑ってたよね」取材が終わっても続いた、“りくりゅうらしい”会話…三浦璃来・木原龍一の成長が見えた、NHK杯アクシデントの舞台ウラ
ミス後の対応に、りくりゅうの成長があった
そこに感じられたのは動じることのない落ち着きだった。すると木原は笑った。 「32歳なんで」 2019年、結成してまだそれほど時間が経っていない頃に三浦は2人の課題の1つをこう語っていた。 「ミスするとそこから崩れることがあるので」 それを思い起こすとともに、あらためて2人の成長を思わされた。そして笑顔1つによって落ち着いたのもまた、2人が時間をかけて培ってきた信頼関係にほかならなかった。 崩れることのない滑りの結果、スケートアメリカのフリー136.44点を超える137.55点を得た。 木原は言う。 「目標にしていた、『スケートアメリカの得点を超える』を、1点でも達成できてよかったです」
木原「僕たちは常に追いかけていく立場で」
明るい表情を見せるのには別の理由もあった。 昨シーズン、木原の腰椎分離症でグランプリシリーズ欠場を強いられ、復帰は今年2月の四大陸選手権を待たなければならなかった。その腰に、10月になって変調を感じていた。 「スケートアメリカの直前から腰痛が少しまた再発していて、腰痛というよりは違和感がありました。昨年のことがあったのでかなり慎重になっていて、スケートアメリカでもドクターの方に診察していただいて、骨ではなくてたぶん筋肉的な疲労だろうと診断をいただきました。日本に帰国したあと、検査を受けて骨に異常はないということが判明したのでよかったなと思います。もちろん、体調と相談しながら無理はしてはいけないと思うんですけど、骨ではないということが分かったので、またプッシュをしっかりかけられるかなと」(木原) 不安材料も払しょくされた2人は、2シーズンぶりのグランプリファイナル進出を決めた。 優勝した19歳のメチョルキナ、21歳のベルラワを念頭に木原はこう話す。 「僕たちは絶対王者みたいな立場ではなかったので常に追いかけていく立場で、また新しい、素晴らしいライバルが出てきてくれて、僕たち自身も常にモチベーションを高く練習することができて、試合に臨むことができるのはほんとうに素晴らしいかな、と思います」
取材が終わっても続いた、りくりゅうらしい会話
取材が終わり、会場からの去り際、ペアスピンに関連して2人が言葉を交わす。 「ダンスリフトしないんだ、と思った」(三浦) 「いや、休憩しようと思って。だってもうあの時点で、ダンスリフトってレベル4の投げるやつでしょ、もうやる必要ないから」(木原) 「あ、そうか、ベースって決まってたからもうやらなかったんだ」(三浦) 「足ついたから完全に」(木原) 「やんないんだって思いながら」(三浦) 「もう無理だ、って。いらないじゃん」(木原) 明るいそのやりとりも、2人らしかった。 (撮影=榎本麻美)
(「オリンピックへの道」松原孝臣 = 文)
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