なぜ運送業界で「ドライバー不足」が続いているのか? 自動運転が進んでもこの問題が解決しない本当の理由
99%が中小企業の現実
トラック運送事業者の特徴として、中小企業が多いことが挙げられる。 全日本トラック協会がまとめた『日本のトラック輸送産業の現状と課題』によると、2022年3月末時点で資本金が3億円以下、または従業員が300人以下の中小企業が全体の99%を占めている。また、従業員10人以下の企業はトラック運送事業者全体の49%を占めている。トラック運送事業は、トラックさえあれば始められるため、参入が比較的容易である。そのため、経済の変動による再編が起こりづらいという特徴もある。 しかし、トラック運送事業者は人手不足という課題を抱えている。国土交通白書によると、2009(平成21)年に自動車・船舶・航空機・鉄道の運転事業者の有効求人倍率が底を打った後、右肩上がりに上昇してきた。コロナ禍で有効求人倍率が急激に低下したものの、自動車運転事業者の有効求人倍率は2倍を維持しており、他の職種を上回っている。つまり、自動車運転業、特にバスやトラックの事業者は慢性的な人手不足に直面している。 人手不足の一方で、賃金や労働時間には改善が見られない。中小型トラックのドライバーの年間所得は410万円から430万円、大型トラックでは450万円から480万円で推移している。 これは全産業平均よりも低い水準だ。また、労働時間にも大きな変動はなく、大型トラックで年間労働時間は2500~2600時間、中小型トラックでは2400~2600時間となっている。これは全産業平均の2100時間を大幅に上回っている。 このように統計を見ていくと、人手不足が指摘されている以上、待遇の改善が求められるのは自然だ。有効求人倍率が高い状況で労働者の待遇を改善すれば、雇用につながる可能性がある。 しかし、トラック事業者は中小・零細企業が多く、営業収益が上がっていない事業者も少なくない。また、規模が小さいため、大企業と比べて効率化や設備の更新が難しい。このような状況では、生産性や効率を改善して収益を向上させることは難しく、待遇改善による人手不足の解消に向けた動きも鈍いのが実情だ。 さらに、事業者数に変動がないことは、業界の再編による効率化が進んでいないことを示している。トラック事業者の現状は、再編や効率化が困難であるといえる。