「大した罪ではない」社会の誤解、痴漢被害に遭った女性弁護士の訴え
痴漢被害者の支援を行う弁護士の青木千恵子さん(47)は約4年前、自身も電車内で痴漢の被害に遭った。加害者だけではなく、被害者すらも「痴漢は大した罪ではないと思ってしまう社会の誤解がある」とし、「痴漢は重大な犯罪だと認識して」と訴える。 【写真】痴漢防止で駅構内を警戒する警察官 ■罪の重さに気付く 令和2年10月、午後7時過ぎ。渋谷駅から乗客同士の肩が触れるほど混雑したJR埼京線の電車に乗った。池袋駅を過ぎた辺りからワンピース越しに尻を触られ、手は下着の中に入り込んだ。覚悟を決め、男の手とボディーバッグのひもをつかんだ。「次の駅で降りてください」。周囲の人が一歩離れ空間が空いた。 赤羽駅で男は逃げようとして青木さんのバッグをつかんで引き倒した。下り階段が視界に入り、「転がり落ちて死んでしまう」と感じた。階段を駆け下りる男を周囲にいた男性2人が追いかけ、倒れて動けない青木さんに人が駆け寄り、駅員を呼んでくれた。 3週間のけがを負い、直後に警察に証拠品として下着を脱いで渡すときには、必要性を理解していても手が震えた。下り階段を見ると死の恐怖を覚えた光景がフラッシュバックする。男は強制わいせつ致傷罪に問われ、裁判員裁判で懲役2年6月、執行猶予4年の判決が下り、民事裁判では520万円の示談が成立した。法廷で涙を流して謝罪する加害者の姿に「裁かれる身になってようやく自分がしたことの重さに気付いた」と感じた。 ■「大丈夫ですか」の声掛けを 被害者支援を行う青木さんのもとには、親に連れられてくる女子学生や男性、60代の被害者など、さまざまな人が訪れ、涙を流して被害を打ち明ける。被害の恐怖から電車に乗れなくなり、学校や仕事などそれまで通りの生活を続けることに苦しむ人も多い。 青木さんは自身の経験から「周囲は助けたいと思っても、どうしたらよいか分からず固まってしまう」と話す。痴漢に気付いた際には「大丈夫ですか」の声掛けを提案する。本人が被害申告を望まない場合もまずは声掛けにより痴漢行為を止めることができ、勘違いだった際でもトラブルに発展しにくい。被害者にとっても、「自分を気遣ってくれた人がいる」という経験は心の回復につながるという。被害者は声が出ない場合には、その場にしゃがみこむことが効果的だ。 ■周囲も手助けを