【肉&春菊天そば】このご時世に気概しか感じない、立ち食いそば界希望の新店「とらや」:パリッコ『今週のハマりメシ』第137回
すぐに届いたそばが、あまりにも良いビジュアルで思わず目が潤んでしまう。こういうそばが食べられる店、本当に貴重になってしまったもんな。 まずは色の濃いつゆをズズズ。あちち。おぉ、うまい。しっかりとだしの効いた、塩気は見た目ほどに強くなくて、ほんのりと甘めのつゆ。な、気がする。というのも、しょうがをしっかり効かせて甘辛く煮込まれている豚肉の味わいが、かなりつゆに影響を与えているから。ただ、肉の旨味もたっぷりと染み出したそのハーモニーが極上なことは言うまでもない。 天ぷらは揚げおきのようだけど、きちんと衣がざくざく、バキバキしていて、つゆに浸してかじるとほんのりと苦い春菊の香りが鼻を抜ける。あわててチューハイをぐびり。 麺のインパクトがまたすごかった。かなり太めで、僕の好きな立ち食いらしいちょいボソ食感でありながら、わしわし感もあって食べていて楽しい。ほんのりと甘みも感じ、これ、かけでもぜんぜん満足できるそばだ。 そして名物のひとつ、とら肉! 前半は春菊に覆われて全容が見えていなかったけれど、ものすごい量......。掘っても掘っても下から出てくる。とろとろほろほろに煮込まれた豚肉を、口いっぱいにほおばれる幸せといったらない。 実は西武線沿線には立ち食い系肉そばの名店がいくつかあって、たとえば西武池袋線椎名町駅前の「南天」。よく見ると使っているどんぶりが同じ(南天オリジナルというわけではなく、業務用で使われることの多い「磁器志野」というデザインのもの)だけど、方向性がまたぜんぜん違う。こうやってバリエーションが広がってくれることは、立ち食いそばファンとして、嬉しいことこのうえない。 このご時世に気概しか感じない、立ち食いそば界希望の新店「とらや」。そばが僕の大好きなタイプのものだったことが嬉しすぎて今も思い出すとニヤニヤしてしまうし、さらに、飲み屋要素がこんなに強い店とは。ありがたいという他ない。 次回は当然、午後3時を目指してやって来てみよう。 取材・文・撮影/パリッコ
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