【社説】差し迫った北朝鮮の参戦、巻き込まれないようにするのが「国家安保」
ウクライナが8月に侵攻したロシア領土であるクルスク州に北朝鮮軍の大部隊が配置され、戦闘への投入を控えているという。韓国とウクライナの首脳は急きょ電話会談を開き、韓国政府の代表団は北大西洋条約機構(NATO)などと北朝鮮軍の動向を情報共有するため欧州に移動した。北朝鮮軍が戦闘に参加するかどうかなど、韓国にも必ず必要な情報は積極的に確保する一方、朝ロと直接摩擦を起こして「戦争の火種」が朝鮮半島に降りかかるようなことは絶対に避けなければならない。 米国防総省のサブリナ・シン副報道官は28日(現地時間)、「北朝鮮兵1万人余りが今後数週間にわたってウクライナ戦線付近のロシア軍を補充することになると思う」とし、「ロシアが彼らをウクライナ国境近くのクルスク州で戦闘や戦闘支援作戦に活用するのではないか、深く懸念される」と述べた。NATOのマルク・ルッテ事務総長も同日、「北朝鮮軍部隊がクルスク州に配置されたことを確認した」とし、「朝ロの軍事的協力が進むことは、インド太平洋や欧州、大西洋の安全保障に対する脅威であり、朝鮮半島の平和を損ねる」と述べた。 外交的な動きも急ピッチで進んでいる。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は29日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との電話会談で、北朝鮮の派兵に共同対応するための「戦略的協議を推進」することにした。北朝鮮のチェ・ソンヒ外相は28日、ロシア訪問のため平壌(ピョンヤン)を出発しており、韓米は31日、ワシントンで外交・国防(2+2)閣僚協議を開く。 米国とNATOが強調するように、北朝鮮のロシア派兵は欧州とインド太平洋の安保を同時に脅かす非常に深刻な問題であることは間違いない。しかし、韓国を軍事的に直接脅かすものではない。韓国が影響を受けるのは、今後ロシアが北朝鮮に提供することになる軍事技術など「見返り」を通じてだ。ロシアと対話を続けることで、朝ロ協力が深刻なレベルまで進まないようにすべきだ。 ウクライナは2022年2月末にロシアの侵攻が始まってから、強制併合された東南部4州など、失われた領土を取り戻さなければならないという名目を掲げて戦争を続けてきた。残念ながら、現在の厳しい「軍事的現実」を考えると、これを実現することは事実上不可能と思われる。11月5日の米大統領選挙でドナルド・トランプ前大統領が勝利すれば、これまで公言してきた通り、ロシアと終戦に向けた妥協に乗り出す可能性がある。このような流動的な状況の中で、韓国だけが「突撃、前へ!」を叫ぶわけにはいかない。 しばらくはNATOなどと積極的に協力し、状況の変化を注視するしかない。「無人機(ドローン)の投入」や「破壊兵器の供与」をちらつかせて脅すなど、朝ロを刺激する動きも禁物だ。この戦争に巻き込まれてはならない。それが真の国家安保だ。 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )