英経済紙が世界でも支給額の安い日本の年金制度を憂慮「評価はCレベル」
「定年70歳時代」が叫ばれる日本では、多くの人が老後の生活に不安を抱いている。では、日本の年金制度は国際的にはどのような評価を受けているのだろう。英経済紙によれば、支給額などの面で決して高水準だとは言えず、専門家はその存続を危ぶんでいる。 【画像】英経済紙が世界でも支給額の安い日本の年金制度を憂慮「評価はCレベル」 日本の金融業界はいま、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)からもたらされるスリリングな興奮で沸き立っている。 2006年に設立されたGPIFの役割は、国民年金の積立金を管理・運用し、急激に高齢化が進む日本社会を支える資金を蓄えることだ。日本最大の機関投資家でもある同組織は、5年ごとに投資計画を見直しており、2024年はその年に当たる。 これにより、246兆円に上るGPIFの資産の基本ポートフォリオと、各アセットクラス(国内株式、外国株式など各資産の分類)への資産配分が決まる。さらに39ある外部の運用会社を変更するか否かや、それぞれに委託される金額なども検討の対象となる。2014年以来、GPIFは資産のおよそ半分を国内外の株式、残り半分を債券として保有している。 労働力不足が深刻化する日本では、60代半ばで引退という人生設計は時代遅れになりつつある。総務省のデータによれば、2021~23年の間に年平均55万人の人口が減少した。65歳を超える労働者の割合は13.6%で、OECD加盟国のなかで最も高い。高齢者自身も、老後に備えて忙しく働きつづけたいと願っているようだ。
GPIFの投資運用は好成績だが…
日本の年金制度は、定額の基礎年金、所得比例型の厚生年金、任意加入型の個人年金からなっている。このなかで基礎年金が最も大きな割合を占め、就職状況を問わず、すべての日本国民に付与される。 高齢者の多い日本では年金の重要性が増しているが、2000年には制度改革が実施された。基礎年金の給付額が減少し、受給開始年齢が60歳から65歳へと段階的に引き上げられたのだ。さらに国民年金の積立金(すなわちGPIF資本)を、株式など比較的リスクの高い投資先に回すことになった。 これは急速に進む少子高齢化に備えるための措置だったが、国民は反発した。 しかしながらこの改革は、いまのところ功を奏していると言えるだろう。2023年度のGPIFの収益率は過去2番目に高い、22.7%だった。こうした実績を残すことができたのは、株式のアクティブ運用を強化したからだ。2023年末には、GPIFの資産のうち17兆円がアクティブ運用ファンドに分配された。今後この傾向に拍車がかかる可能性は高い。 金融業界でも、GPIFがオルタナティブ資産(未公開株やVCなどリスクがある半面、利回りが高い資産)への投資を増やすことが期待されている。2024年3月の時点で、その割合はわずか1.5%だった。 金利が上がると、オルタナティブ資産投資のレバレッジ効果は薄れる。それゆえ、割合が増えるか否かは世界の金利の動向次第だと、GPIFの植田栄治CIO(最高投資責任者)は述べている。
日本の年金制度は「Cレベル」
このように、さまざまな改革が進められてはいるものの、日本の年金制度の評価は他の先進諸国と比べて決して高くない。年金コンサルの世界大手マーサー社と、国際金融資格の認定組織CFA協会が毎年発表する調査において、日本の年金制度の得点は100点中56.3点だった。これはCレベルの評価で、イタリア、中国、韓国と同等だ。
Alan Livsey