フリーアナウンサー・神田愛花『44歳の初夢は、ウンチ。』
5月29日、44歳になった。人生も半分。自分なりにそこそこ頑張って生きてきたと感じているので、″この先まだ同じだけ頑張らないといけないのか″と思うと正直、途方に暮れる。だが44歳になって初めての夜に見た夢は、「よぉし、まだまだやりますかぁ!」と奮い立たせてくれる素敵な夢だった。 【画像】個性あふれる神田愛花さんの直筆イラスト(1回~54回)はこちら お天気が良い春の日。レッドヴァレンティノというブランドの、5段フリルになっているロングスカートを着て銀座に出掛けた。長年愛用していたブランドだが、昨年、生産終了。もうどこに行っても購入できないので、長く大切に着たいと思っていた。途中、お腹が痛くなり、(もしかしてウンチかなぁ? お腹が張っていたから良かった♫)と、銀座三越のお手洗いに寄った。 便座に座り、(ん~っ)と踏ん張った。が、なかなか出ない。もう一回強く踏ん張った。するとスポンッ! スポンッ! スポンッ! と、飛び出るように固めのウンチが3つ出た。「ふぅ~」。もっと出たらお腹が楽になるが、とりあえずこれで終了の気配。トイレットペーパーでお尻を拭いた。だがそこでビックリ! お尻がない! いや、お尻はあるのだが、布で覆われていて露(あらわ)になっていないのだ。(ゲー!! なんで!?)。恐る恐るお尻に目をやると、一番下のフリルをまくり忘れ、スカートを履いたまま用を足していたとわかった。 「うわー!!」と声が出た。大切なレッドヴァレンティノのスカート。見られたもんじゃないくらい汚れているはず。でも、してしまったことは仕方ない。不幸中の幸いか、立ち上がればこの上に4段のフリルが重なる。(何食わぬ顔で歩けば、周りからは気付かれないだろう!)。開き直って立ち上がると……コロン……コロン……コロン……。中くらいのスーパーボールのような固くて丸いウンチが、床に転がり出たのだ。(うわ~……)。 逃げ出したくなった時、目が覚めた。(なんだーっ!! 夢か!! 良かった~!!)。念のためお尻に手をやって確認してみたが、特に変わった様子はない。時計を見ると、まだ朝5時。(44歳になって初めて見た夢が、ウンチを漏らした夢か……)。情けなくなりながら窓に目をやると、外が少し明るくなっていた。だが、室内にそれ以上に明るい光を感じた。 横で寝ているはずの夫が、スマホでアメリカのドラマ『24』を見ていたのだ。「早っ!」と言うと、イヤホンを外し、「……ん? 起きたのか?」とこちらを見てきた。決して寝起きに相応(ふさわ)しい内容ではないが、最悪な″初夢″を一人で受け止めきれず、夫に話した。 ◆最悪を最高に変えた夫の一言 『24』を一時停止し、最後まで聞いてくれた夫。そして私の「初夢がこれって最悪じゃない?」の問いに、「愛花は44になっても、ウンを身に付けたんだなぁ」と答えたのだ。夫の発想に驚愕した。そうか、ウンチ=運。それをお誕生日に見るなんて、縁起がいい。(私、まだまだいいことあるんじゃない!? すごいじゃん!!)と、最高の初夢に変わった。 どのお宅の旦那さんもこんなふうに受け止めてくれるのだろうか。「汚いなぁ、朝からやめてよ」と、嫌がる旦那さんもいるのではないか。そう思うと、私は本当に素敵な人と結婚したなぁと感じ、溢れる「ありがとう!」を伝えた。 我が家は夫婦揃って5月生まれ。だから毎年5月は共にドレスアップをし、フレンチディナーに行く決まりだ。今年私が選んだのは、レッドヴァレンティノのドレス。腰から17段フリルのスカートが広がる、総スパンコールのピンク色のワンピースだった。歩く度にフリルがフワンフワンと大きく揺れ、街頭の灯りで全身がキラッキラに光る。昨年購入し、この日のために一度も着ずにとっておいた。ようやく着られて嬉しく、夜道をスキップしてみたり、クルクル回転してみたり。夫はそんな私に「うわぁ、またすごいの着てるなぁ」と言いながら、一生懸命動画や写真を撮ってくれた。「そんな派手な服、やめて」とは決して言わず、私が私らしくいられるようにしてくれる夫。夜空に響くほどの大きな声で、もう一度「ありがとう!!」と伝えた。 44歳、神田愛花。この幸せが続くといいな。そのためにも、家事にお仕事に遊びに、毎日すべてに全力投球だ!! かんだ・あいか/1980年、神奈川県出身。学習院大学理学部数学科を卒業後、2003年、NHKにアナウンサーとして入局。2012年にNHKを退職し、フリーアナウンサーに。以降、バラエティ番組を中心に活躍し、現在、昼の帯番組『ぽかぽか』(フジテレビ系)にメインMCとしてレギュラー出演中 『FRIDAY』2024年6月28日号より イラスト・文:神田愛花
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