「南極飯!」観測隊員の心と体を支える料理とは 東京農大で企画展
南極の厳しい環境で働く観測隊員たちを支える食事を再現した企画展「南極飯!」が、東京都世田谷区の東京農業大学「『食と農』の博物館」で開かれている。 【写真】初の女性隊長が率いる66次南極観測隊が出発 「2世」越冬隊員も すし、エビチリ、冷やし中華、うなぎ丼……。壁一面に貼り付けられた食品サンプルが目を引く。62次南極観測越冬隊が昭和基地で食べた料理を再現したものだ。 企画したのは同大博物館情報学研究室の田留健介准教授。61次隊員として2020年1月初旬~2月半ば、南極大陸のセールロンダーネ山地で生物調査をした。昭和基地から約700キロ離れ、気温は夏でも零下20度ほどに下がる過酷な環境で、空腹になると指先まで冷えきり、食べると体が温まってほっとした。「食事がしっかりできないと体も心も安定しない」と食の大切さを実感。「南極展はこれまでいろいろあったが、食だけにこだわってみたかった」という。 食品サンプルを作るため、昭和基地の食事を毎日撮影していた62次隊の越冬隊員から写真を借りた。だが、業者に問い合わせると「型をとって作るので、写真だけでは無理」と断られ続けた。ようやく大阪市の会社「いわさき」が引き受けてくれ、50食分が完成した。中には、山盛りの千切りキャベツのサンプルも。南極で1年を過ごした越冬隊員にとって、次の隊が来る時に届く生の野菜は格別で、その時の「ごちそう」の定番だ。 企画展では、1次隊(1956~58年)が食べたというナンキョクオオトウゾクカモメの焼き鳥も再現された。現在は、捕まえて食べることが国際条約で禁じられており、環境や食をめぐる歴史も見ることができる。 3月29日まで。入館無料、午前9時半~午後4時半、日・月・祝休館。問い合わせは同博物館(03・5477・4033)へ。(中山由美)
朝日新聞社