WBA世界ミドル級王者・村田諒太の消えた不安要素とは?
プロボクシングのトリプル世界戦(23日・横浜アリーナ)の公式会見が21日、都内のホテルグランドパレスで行われ、タイトル戦に出場する6選手と、復帰舞台に立つ元4階級王者のローマン・ゴンサレス(ニカラグア)が出席した。WBA世界ミドル級王者、村田諒太(33、帝拳)は、同級8位のスティーブン・バトラー(24、カナダ)との初防衛戦に挑む。過去アッサン・エンダム戦(フランス)、ロブ・ブラント戦(米国)では不可解なレフェリングに困惑させられたが、今回は、日本でも数多くの世界戦を裁いている29年のレフェリー歴を誇るWBAのベテラン、ラファエル・ラモス氏(米国)がレフェリーを務めることになった。足を使う挑戦者のバトラーを追いつめてパンチをまとめる展開となりそうなだけにレフェリーストップのタイミングは重要ポイント。これで不安材料はひとつ減った。KO決着必至だ。
レフェリーは来日経験多数のベテラン
来日した世界的プロモーション会社、トップランク社のCEO、ボブ・アラム氏が公式記者会見で”追い風”を吹かせてくれた。 「私が来日しないエンダム戦では論争を引きおこす結果となり負けた。だが、次に私が来日したら、しっかりとエンダムに勝利しベルトを獲得した。私が来日した前回のブラント戦もKOで勝利した。私が日本に来ることは、勝利のお守りになる。だから見届けようと思った。KO勝利での完全決着を期待している」 英語のわかる村田はアラム氏の洒落たスピーチに思わずニヤついた。 そして「ラッキーパーソン。心強い」と、お返しした。 そのやりとりをムスっとした表情で聞いていたのが、挑戦者のバトラーと彼をプロモートするゴールデンボーイ・プロモーションのロベルト・ディアス氏だ。 KO率80%を誇るバトラーが、「調子はいい。いいトレーニングキャンプをやってきた。あと2日、試合が楽しみだ。私の技術、パワーのすべて……得意不得意にかかわらずすべてを見せる。力強い気持ちでいる。言い訳はできない。準備はできている」と言えば、プロモーターのディアス氏も援護射撃。 「(バトラーと)戦う義務もないのに選んでくれた。村田は危険な相手を選んだ。勝っても負けてもファンが勝者の試合になる。花火のような激しい試合。バトラーが輝く時間がこれからくる」 ピリピリした対決ムード。 だが、村田への”追い風”は、これだけでない。 アラム氏が来日せずに判定負けした2017年5月のエンダムとのWBA世界同級王座決定戦では、結果的に資格停止となったジャッジの不可解判定だけでなく、レフェリーのルイス・パボン氏(プエルトリコ)も、エンダムがロープをつかんでダウンをこらえたのに、それをダウンと認定しないなど明らかなレフェリングのミスがあった。 さらに王座を奪回した今年7月のブラントとの再戦でも、WBAはエンダム戦と同じこのパボン・レフェリーを派遣。この試合でも、ブラントがロープをつかんでもダウンと認めず、一度、両者の間に入って試合を止めようとして、やっぱり続行させるという中途半端なレフェリングで村田を大いに困惑させた。 「フェイントですからね(笑)。やっぱり止めへんのか、と、いらんことが頭をよぎりました」。ミドル級の試合には、起死回生の一発逆転がある。レフェリングは重要なのだ。 だが、今回のレフェリーは数多くの来日経験と世界戦経験の豊富なラモス氏に決まった。ラモス氏は、1990年からレフェリーをはじめ、ここまで474試合をさばいたWBAを代表するベテランレフェリー。1992年3月の井岡弘樹対ノエル・ツニャカオのWBA世界ライトフライ級タイトルマッチで初来日し、2014年大晦日の内山高志、2016年大晦日の井岡一翔の世界戦などを任され、直近では、6月のWBA世界ライトフライ級王者、京口紘人(ワタナベ)のサタンムアンレック・CPフレッシュマートとの初防衛戦を裁き、ベテランらしく不公平感のないニュートラルなレフェリングを見せていた。 レフェリーが、日本に馴染みのあるベテランと聞くと、村田も「安心しました」と頬を緩めた。ひとつでも不安材料は消えた方がいい。そして、もしかすると、一瞬のレフェリングが試合を左右することにもなってくるのだ。