なぜ「令和の米騒動」は起こった? “元凶”農政に欠けすぎている「ある視点」とは
業界関係者が嘆く、農政に欠けすぎている「ある視点」
「コメの消費を拡大するためには、伸長市場に手を打つ、マーケットインの発想が必要。従来からコメ政策はプロダクトアウトの政策であり、変化への対応ができていない。伸長する中食産業が使用する業務用米に向けた政策が必要なのです。業務用米の不足、価格の上昇という現状では、伸長市場のメニューが、ごはんの盛りを減らす、寿司のシャリを小さくするなど、むしろ消費増にブレーキをかける状況になっています」(清水氏) 農水省は米価を高く保つことにきゅうきゅうとしている。そのために、コメの生産を抑制するいわゆる減反政策を1970年以降、続けてきた。コメの需要は毎年10万トンのペースで減っている。こう決めてかかりこそすれ、需要を伸ばす可能性を検討してこなかった。
なぜスーパーからコメが消えたのか?コメ政策の「誤算」
「コメの需要は減り続ける」という前提が誤っていたことが、今夏のコメ不足で露呈した。農水省は毎年、「適正生産量」を算出し、生産量がこれを超えないよう都道府県に促す。2024年産のそれを前年並みの669万トンに設定していた。 ところが、農家の高齢化や生産意欲の減退で作付けが減り、猛暑で収量が下がったため、現実の生産量は661万トンまで落ち込んでしまう。かたや需要量は702万トンと、農水省の予想を30万トン超上回った。結果として、41万トンが不足し、スーパーの棚にコメがない事態になったというのだ。 需要量が増えた要因として、物価高騰でコメに値ごろ感が出たことが指摘されている。特にコムギの価格が上がり、麺やパンが値上がりする中、価格の上昇幅が小さいコメが例年より多く購入された。さらに訪日外国人が増えたことも影響した。8月に南海トラフ地震臨時情報が出され、備蓄用の買いだめまで起きた。 コメには需要を伸ばせる余地がある。減反政策で生産量を抑えることこそが、その可能性をつぶしてしまっている。 「消費の多いところにコメを供給して米離れをなくし、生産量を増やしていこう。普通はこう考えるじゃないですか。それをまったく違うところに力を入れて、どんどん消費を減退させてきたというのが、今のコメ政策じゃないか」(清水氏)