”超格安空き家”全国に拡大 「0円」も主流 自治体がツアー
家屋、ガレージ、庭園、倉庫、全部合わせてワンコイン。売りたくても売れない空き家を持つ人、できるだけ安く買いたい人、空き家問題に頭を悩ませている自治体の課題解決を図る「超格安空き家」が全国に広がっている。価格の主流は0円か100円で、民間運営のマッチングサイトが3者をつなぐ。カフェや2地域居住、宿泊施設に改修するなど購入の目的はさまざまで、格安空き家見学ツアーを始めた自治体もある。 【画像】長野県中野市の格安空き家マッチングの仕組み
900軒以上が成約
釧路市など北海道1市5町、愛媛県八幡浜市、香川県坂出市と提携するのは、不動産の無償譲渡マッチングサイト「みんなの0円物件」を運営する「0円都市開発合同会社」(北海道旭川市)。自治体は空き家に悩む所有者にサイトを紹介する。サイトは4年前に開設し、これまで900軒以上が成約した。 きっかけは中村領代表が2018年に相続した店舗兼住宅。使い道がなく処分しようとしたが、解体などに300万円以上が必要で土地が売れても270万円の赤字だった。 「放置しても税金がかかるし、老朽化すれば近所に迷惑がかかる」。悩んでいた時、店を始めたいという人と出会い、無償譲渡。0円の空き家の紹介サイトを始めると、1軒につき平均50件、最大500件を超える問い合わせが寄せられた。 地方の空き家は老朽化などで値が付かず、不動産業者が取り合わない物件も多い。周辺環境の悪化や集落消滅に頭を痛める自治体にとっても「渡りに船」となっている。
市が見学ツアー
長野県中野市は21年、マッチングサイト「空き家ゲートウェイ」を運営する「YADOKARI」(横浜市)などと提携し、格安空き家見学ツアーも始めた。市内の物件を100円か100万円で紹介し、これまでに7軒中5軒が成約、うち1軒は喫茶店として改修され、オープンした。 同市都市計画課の大原弦太さん(32)は「倒壊などの恐れがある『特定空き家』になると、所有者に処分するよう行政指導する。しかし、『100円で売れるかもしれません』と提案できれば未来が変わる」と語る。 運営会社の収入源は仲介手数料ではなくサイトの広告料。不動産業者が扱いにくく市場に流通しない空き家の解消につながる。一方、民間組織「全国空き家アドバイザー協議会」の井上幸一専務は、格安空き家について「その地域に住みたくなる努力も必要だ」と指摘する。(糸井里未)
<ことば> 空き家問題
2018年総務省調査によると、空き家総数は849万戸。うち賃貸用または売却用の住宅、別荘などの「二次的住宅」を除いた空き家は349万戸と、20年間で2倍近くも増えた。その中で木造の戸建てが240万戸と最多という。