ヤクルト・西川遥輝&山崎晃大朗、同じ小学校出身の3人がグラウンドに集まる〝奇跡〟
【武田千怜のアナザーストーリー】プロ野球の試合前、グラウンド上で行われる選手の交流を見ると、あいさつを交わす選手の関係性を考える。例えば、42歳のヤクルト・青木の下に23歳の西武・蛭間があいさつに訪れたら、「早大の先輩と後輩」。24歳のヤクルト・丸山和が30歳の中日・柳へあいさつへ向かえば、「明大の後輩と先輩」。プロ野球の名鑑を見れば、だいたい2人の関係性が分かるものだが、記者も一瞬、分からなかったシーンがあった。 【写真】ヤクルト・西川遥輝と山崎晃大朗は和歌山県内の同じ小学校出身 5月29日の神宮球場。ヤクルトとロッテの試合前、32歳の西川と30歳の山崎(ともにヤクルト)が、三塁ベンチ前でストレッチをしていた34歳の益田(ロッテ)に歩み寄り、しばらく笑顔で会話していた。西川は智弁和歌山高、山崎は青森山田高-日大、益田は市和歌山商(市和歌山)高-関西国際大からプロへ進んだ。高校、大学は同門ではないが、3選手の共通点は野球王国、和歌山県の出身であることだった。 〝和歌山県人会〟後に取材をすると、名鑑には書かれていないような濃い関係があることが分かった。同県出身どころか、同じ小学校の出身。3人が卒業した和歌山・紀の川市立西貴志(にしぎし)小学校は、和歌山県の北部に位置する紀の川市にある。北部には和泉山脈、南部には紀伊山地を控え、紀の川が流れる。人口5万8816人(2020年10月1日現在)の市で、山崎は「のんびりとした国」と表現する。 プロ野球の世界。高校や大学が同じであることはよくあるが、小学校が同じ選手が3人もグラウンドに集うのはまれだろう。西川は「まぁ、ないね」とうなずき、山崎は「(和歌山県の高校出身の川端)慎吾さんにも、小学校、中学校が一緒って珍しいんじゃないと言われました」と笑った。3人は少年野球チーム「西貴志ドリームス」に所属していた。 西川にとって益田は3学年上の先輩で、山崎は1学年下の後輩。「益田さんに関しては、保育所から一緒で、小学校も中学校も一緒。姉貴は益田さんと幼馴染」だといい、幼少期から知っている間柄だ。 今季から西川がヤクルトに新加入したことで、山崎は久しぶりに地元の先輩と同じユニホームを着て戦うことになった。「めっちゃ変な感じがします」と苦笑いしつつも、「他の先輩と変わりなく、楽しくいじらせてもらっています」と笑顔。持ち前の明るさで積極的にコミュニケーションを図っている。
西川は「これまで全然、関係がなかった方でも、和歌山出身の人がいたら、あいさつにいく」といい、〝和歌山の絆〟を実感している。和歌山で過ごした小学生時代。プロ野球選手と接する機会はほとんどなかったという。和歌山県勢が切磋琢磨(せっさたくま)して輝き、地元の野球少年や少女に夢を届ける。(サンケイスポーツ・ヤクルト担当)