キセキの連続で話題に 福岡県糸島市の神在神社そばにある「神石」
そのミカン畑もいつしか廃れ、竹が生い茂る林の中に、巨石も隠れるようになっていたそうだ。数十年の間、そのままの状態が続き、巨石の存在を知る人は地元でもほとんどいなくなった。 「体が動くうちに、きちんとお祭りしよう」。2016年、馬田さんは地主の了解を得て、地元区長会の仲間らと竹を伐採し、神社から続く道を整備した。しめ縄を掛け、案内板を立てるとテレビなどで紹介され、参拝者がぽつぽつと現れるようになった。
2019年頃、漫画「鬼滅の刃」が大ヒットし、社会的ブームになった。そのとき、馬田さんにとって一つ目の”想定外”が起こる。 作品では、修業中の主人公が巨石を切り裂くシーンが登場する。その巨石が「神在神社の神石にそっくり。モデルになったのでは」とSNSなどで話題に。木々に囲まれた様子や、しめ縄が掛かっている点も符合し、登場人物と同じ格好をした子どもや若者たちが訪れる”聖地”になった。
宝くじが大当たり
そして迎えた今年1月、新たな”想定外”で地域は沸いた。神在地区にある宝くじ売り場で「ロト7」の1等10億円が出たのだ。神社や神石が再び、パワースポットとして注目を集めた。「国内だけでなく、世界中から老若男女が訪れるようになりました」と馬田さん。熱心な人は2回、3回と参拝を重ねるそうだ。
噂(うわさ)を耳にしていた藤原美鈴さん(53)はこの日、福岡市内から訪れ、姉妹で神石の前に立った。「こんなに大きな丸い石が林の中にあるなんて、神秘的ですね」と話し、両手を広げて深呼吸したあと、瞳を閉じて神石にそっと手を添えた。
千灯篭祭では、神社の参道に300個ほどの明かりが並んだ。よく見ると、アニメや人物、風景など、地元の子どもやお年寄りが描いた絵で彩られている。個性豊かで見て楽しく、日が落ちると周囲を幻想的に演出した。
境内では、子どもたちが笛や太鼓の演奏を披露した。かなりの練習を重ねたのだろう、期待を超える見事な腕前だ。観衆から惜しみない拍手が送られ、普段は静かな里山がにぎわいを見せた。
目の前の千灯篭祭の様子が、古里の神社の夏祭りの光景と重なった。忘れかけていた遠い夏の記憶と、楽しかった幼少期の思い出がよみがえった。
読売新聞