いま議論されている「税制改正大綱」とは?2016年度以降、税制はどうなる?
税制調査会が2016年度の法人税や消費税などの見直しについて議論をしています。年末には「税制改正大綱」が発表されますが、そもそも「税制調査会」というのどんな組織で、「税制改正大綱」とはどのようものなのでしょうか? そして見直しのポイントは? 税制に詳しい中央会計事務所の税理士・柏倉修さんが解説します。 --------------
そもそも税制調査会とは? どんなことを議論しているの?
政府税制調査会が経済社会の構造変化についての検証を終え、10月から所得税の具体的な見直し議論を開始したと報道されました。 税制調査会は、内閣府に置かれる有識者による首相の諮問機関です。そのため政府税制調査会、政府税調と呼ばれます。政府税制調査会の役割は、首相の諮問に応じて税制の基本的な事項について調査審議することで、具体的な改正案を決めるのは与党である自由民主党、公明党に置かれた税制調査会です。 税制の改正は、まず、首相の方針を受けて政府税制調査会が秋まで議論を重ね、首相に審議結果を報告します。8月には各省から税制改正要望が出されており、与党税制調査会がこれらの意見、要望を調整して年末に税制改正大綱として発表します。政府は年明けに予算案とともにこれを閣議決定します。法案化されて国会で審議入りし、3月中に可決成立、4月から新しい法律が施行される流れになっています。 14年11月に政府税制調査会は「働き方の選択に対して中立的な税制の構築をはじめとする個人所得課税改革に関する論点整理(第一次レポート)」を取りまとめ、所得税の配偶者控除の改正についての選択肢を示しました。当時、配偶者控除が改正されそうだとの報道がされましたが、与党の税制調査会は15年度税制改正大綱で「社会・経済の構造変化に対応するための各種控除や税率構造の一体的な見直しを丁寧に検討する」として配偶者控除の改正は行われませんでした。 また、消費税率が10%に引き上げられることによる負担軽減策として、マイナンバーを利用した還付制度を財務省が提案しましたが、公明党が反対しており、政府は消費税増税の17年4月にこの制度を導入することを断念した、という報道もありました。現在、自民、公明両党は公明党が主張する軽減税率の導入を軸に協議を行っています。 このように、最終的に税制改正の内容を決定する力は与党の税制調査会が持っています。