発生から2週間たった厳冬期の避難所は…換気少なく「衛生環境が悪化しつつあった」 能登半島地震被災地支援 鹿児島県薬剤師会第1陣メンバーが活動を振り返る
能登半島地震の被災地支援で、鹿児島県薬剤師会の第1陣として西之表市の田中孝明さん(39)が1月17~21日に石川県入りした。道路は寸断され、広範囲にわたって断水が続く中での活動。厳冬期のため、避難所の空気の入れ換えが少ないことに気付いたという。「発生から約2週間たち、衛生環境が悪化しつつあった」と振り返った。 【写真】道路が寸断され、通行止めを表示するカーナビ画面(石川県穴水町で撮影、本人提供)
同会からの派遣チームは3人。羽咋(はくい)市に設置された拠点から穴水町まで、通常ならば車で片道1時間のところを約2時間かけて毎日通った。災害派遣医療チームと被災者を巡回診療したほか、避難所の衛生管理が主な仕事だった。 灯油ストーブを常時使っている避難所が多く、二酸化炭素濃度が適切とされる基準の3倍を超えるケースも散見された。「避難生活が長引けば、自然とほこりもたまっていく。感染症を引き起こす可能性があり、こまめな換気を呼びかける必要があった」と、冬ならではの注意点を挙げる。 このほか「1.5次避難所」の混雑ぶりが気になったという。真っ先に避難する「1次避難所」から、最低限の生活環境が整った宿泊施設など「2次避難所」に移る前の一時受け入れ先だ。「全県的な災害で滞在先の確保やすみ分けが難しいのだろう」と語る。 田中さんは2016年の熊本地震以来、2度目の被災地派遣。当時に比べ、災害時の支援態勢が強化された実感もある。「前回は派遣チームもテント生活だったが、今回は公共施設が拠点になった。市販薬などもどんどん運ばれてきた」
トラックなどを改良し、調剤設備を備えた「モバイルファーマシー」が各地で活躍し、大阪からは水が内部循環する手洗いスタンドも持ち込まれた。交通網の分断で「陸の孤島」と化した能登半島。田中さんは自らが住む離島に重ね、「災害を想定した準備の大切さを改めて感じた」と話す。
南日本新聞 | 鹿児島
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