【ラグビー】値千金のキックと刈り取りの責任。日野剛志と伊藤平一郎(静岡ブルーレヴズ)、勝利を支える
34歳と33歳。ふたりのベテランが、快勝劇の中で輝いた。 HO日野剛志とPR伊藤平一郎は、3月23日(土)におこなわれた静岡ブルーレヴズ×トヨタヴェルブリッツに出場。24-8と快勝した80分を終えて、いい表情をしていた。 当日の試合会場、エコパスタジアムは雨。PGでの先制点こそヴェルブリッツに許したものの、ブルーレヴズは前半から攻めた。 この日、チームは「1ラウンドKO」のテーマを掲げて試合に臨んだ。 雨の中で、試合のテーマを実行した。 藤井雄一郎監督は、「前半をしっかり攻撃し、後半につなぐプラン。天候の悪い中でも、しっかり攻めた。雨でもミスを恐れずに戦ってくれた」と、結果を残した選手たちを評価した。 同監督が選んだ先発メンバーも、試合のテーマに沿ったものだった。 3番で先発したのは23歳、アーリーエントリーでチームに加わって日の浅いショーン・ヴェーテー(環太平洋大学)。NO8には日野レッドドルフィンズから今季移籍した25歳、この日がブルーレヴズでの初出場となるシオネ・ブナを起用した。 監督は、「パンチ力がある」と2人の選出理由を口にした。ヴェーテーは190センチ、132キロで、ブナは192センチ、116キロ。 実際試合の中でも、ブナが相手防御を引きずって前へ出るシーンが何度もあった。 前半からブルーレヴズの積極さが目立った試合。しかし、ハーフタイムに入る時のスコアは16-3。後半次第では天秤の傾きはどうなるか分からなかった。 しかし青いジャージーは、後半も手を緩めることなく前に出て勝利をつかんだ。 若手が躍動して流れをつかんだ試合の中で、価値の高いプレーをしたのがベテラン勢だった。 日野がファンを喜ばせたのは後半8分過ぎ、自陣でのラインアウトだった。相手が投げ入れたボールが後方に抜ける。そのボールを日野が受け、迷いなく蹴った。 背番号2の右足で蹴られたボールは、ヴェルブリッツ陣22メートルライン内で弾み、外へ。50/22メートルキックとなる。 ブルーレヴズボールのラインアウトで試合は再開され、そこからの攻めでトライを奪う。21-3と差を広げた。 その場面を、「(後半に入り)どちらが先に点を取るか、という場面だった」と振り返った日野は、判断の背景を話した。 50/22メートルキックが導入されてから、いつも『備え』が頭にあった。「抜けてくるボールを取ることがよくあるので、普段からキックを練習していた」という。 そのスペースに相手は無人と頭に入っていた。咄嗟に「ダイレクトにならないように蹴った」。 日野はスクラムでも周囲をリードした。 この日は前述の3番のヴェーテーだけでなく、1番の茂原隆由も187センチ、116キロと大きく、若かった(24歳)。 172センチのベテランは、両脇にいるキングサイズの2人を「気持ちよく前に出してあげること」に注力した。 勤勉なFWバックファイブもいるのが、ブルーレヴズの強みだ。 ヴェルブリッツの強力なスクラメイジャー、須藤元樹の存在もあり、前半は圧力を受けるシーンもあったけれど、日野は全員をまとめ上げて対抗した。 「受けてしまうこともありましたが、自分たちのセットアップができた時には押せると分かったはずです。そんなスクラムを組む確率を高められるようにしていきます」 スクラムに造詣の深い34歳は、精度を高めていく作業を「打率を上げる」と表現した。