乗り越えた桐光の大きな壁。横浜創英が初の神奈川決勝進出!
[11.3 選手権神奈川県予選準決勝 桐光学園高 0-2 横浜創英高 ニッパツ] 横浜創英が桐光学園の壁を乗り越え、初の決勝進出! 第103回全国高校サッカー選手権神奈川県予選準決勝が3日に横浜市のニッパツ三ツ沢球技場で行われ、今夏のインターハイ8強・桐光学園高と横浜創英高が対戦。横浜創英が2-0で勝ち、初の決勝進出を果たした。横浜創英は10日の決勝で東海大相模高と戦う。 【写真】影山優佳さんが撮影した内田篤人氏が「神々しい」「全員惚れてまう」と絶賛の嵐 横浜創英が歴史を塗り替えた。それも、神奈川県を代表する名門校で、過去2年連続選手権予選で敗れていた桐光学園に勝っての決勝進出。PKストップなど大活躍のGK和田薫空(3年)は、「(桐光学園は)神奈川の1番強い高校だと思っていました。そこに勝てば全国出るチャンスあるんだって強い気持ちを持って試合に挑んでいました」と振り返る。 桐光学園OBの宮澤崇史監督は、2016年のインターハイ予選準決勝で母校に勝利して全国大会出場を決めた経験を持つが、選手権予選での桐光撃破は初めて。「去年、一昨年はもうちゃんと跳ね返されて大きな壁になっていたんで、『今年こそは』とは思ってたところで勝つことができました。」と微笑んだ。「サッカーにきちんと向き合える子たち」(宮澤監督)というと世代が大きな壁を越え、選手権初出場に王手をかけた。 13度目の選手権出場を狙う桐光学園の先発は、GK大村明裕(3年)、右SB武山陽介(2年)、U-17日本高校選抜候補CB杉野太一主将(3年)、CB青谷舜(3年)、左SB陶山響(2年)、中盤は湯藤翔太(3年)と米川洋輝(1年)のダブルボランチで、右SHがU-16日本代表MF萩原慶(1年)、左SHが吉田晃大(3年}、前線に倉持慶太(2年)と丸茂晴翔(3年)が入った。 一方の横浜創英は、GK和田薫空(3年)、右SB河井誠治(3年)、CB山野真生(2年)、CB尾毛駿介(3年)、左SB岡本ナオ(3年)、中盤は谷口史弥(3年)と鈴木快(1年)のダブルボランチで、右に岡村琉生(3年)、左に福田裕翔(3年)、トップ下が小川秀太(3年)で1トップを今大会初先発のFW川上哲平主将(3年)が務めた。 桐光学園は前半8分、青谷のロングフィードを胸トラップした倉持が左足シュート。11分にも吉田が左コーナー付近を突破してゴールへ迫る。横浜創英は自陣PAから谷口や鈴木がボールを引き出しながら繋いで前進。ドリブル、パス交換でDFと入れ替わろうとしていたが、ベンチの「厳しく!厳しく!」の声に米川らが呼応する桐光学園はアプローチが深く、ボールを引っ掛けていた。 そして、湯藤が素早くボールを動かし、武山、陶山の両SBの攻め上がりも交えたサイド攻撃。俊足MF萩原が縦に仕掛けてCKを獲得したほか、一際強さを見せる杉野がインターセプトから一気に前進し、迫力のあるセットプレーから青谷らがゴールへ迫っていた。 ただし、横浜創英は切り替えのスピードで桐光学園に負けず、相手の攻撃の精度を上げさせない。また、守りの要・尾毛が背後をケアし、182cmの山野とともにクロス、ロングボールにも対応。そして、試合を通して予測力や技術力の高さを見せていた1年生MF鈴木や谷口がセカンドボールを回収して攻撃に結びつけた。 横浜創英は宮澤監督が「クリアして逃げるんじゃなくて、自分たちのマイボールにして攻撃をしていくっていうプラン」通りに河井、岡本の両SBや尾毛、山野の2CBも逃げずにボールをキープしながら攻撃を組み立て直す。中央から縦パスを差し込む回数を増やし、福田らがキックフェイントを交えて効果的なドリブルを繰り出す。そして、岡本の左クロスから岡村がヘッドを放ったほか、ワンツーやスルーパスで揺さぶりをかけ、10番MF小川がDFを外してシュートを1本、2本と撃ち込んだ。 桐光学園は29分、丸茂が切り返しを交えたドリブルでDF2人をかわして左足シュート。だが、横浜創英は河井がブロックして得点を許さない。逆に33分、横浜創英は敵陣へ押し込むと、PA手前で強引に繫ごうとした相手のパスを岡村がインターセプト。そして、PAへドリブルで切れ込むと、パスを受けた川上が右足シュートを狙う。これは右ポストを叩き、こぼれ球に岡村が飛び込む。桐光学園GK大村が必死にブロックするが、最後は川上が左足で蹴り込み、先制した。 横浜創英はさらに35分、福田の左クロスがクロスバーを叩く。この跳ね返りを川上が頭で決め、2-0。桐光学園の鈴木監督は失点の仕方と「ほぼ連続失点に近い点は特に痛かったです」と指摘する。だが、2点ビハインドを取り返す力は十分。後半開始から萩原とMF伊藤壮喬(3年)を交代すると、4分には青谷の右足FKがクロスバーを叩いた。 8分にも丸茂の右クロスに吉田が反応。桐光学園は攻撃から守備への切り替えも速かったが、相手のキープ力の前にファウルが増えてしまい、流れを切ってしまう。また、この日はフィードのミスや連係ミスも増加。逆に横浜創英の小川や鈴木にボールを大きく運ばれ、クロスやセットプレーに繋げられてしまう。 桐光学園は相手を押し込み切れない中で迎えた17分、湯藤と倉持をMF阿部凌磨(3年)とFW浦上大和(3年)へ入れ替える。その直後、左クロスが相手ハンドを誘ってPKを獲得。エースFW丸茂が右足で狙うが、横浜創英GK和田が右へ跳んで弾き出した。 このビッグプレーが横浜創英に与えた勇気。この後、22分に岡村をMF古垣太樹(3年)へ、25分に山野と谷口をCB元田和寿(2年)とMF菅沼響月(2年)へ入れ替えた横浜創英は集中力の高い守りを見せ続けた。 まず1点の欲しい桐光学園は、相手が攻め切る前にボールを奪い返して連続攻撃。青谷を前線へ上げ、幾度もクロスをゴール前に入れていた。そしてシュートへ持ち込むシーンもあったが、全体的に質の部分で苦戦。クロスやロングボールを相手GK和田にキャッチされたほか、シュートもDFにブロックされるなどゴールが遠い。 横浜創英は40+3分、鈴木と小川をDF田中奏匠(3年)とFW島崎廉(2年)へスイッチ。40+5分、混戦から桐光学園FW丸茂の放った右足シュートをGK和田がキャッチすると、間もなく決勝進出を告げる笛が鳴り響いた。 横浜創英の宮澤監督と桐光学園の鈴木監督は桐光学園の同級生でともにレギュラーとして選手権などを戦った親友。「桐創戦」と題した3年生の引退試合も実施してきた。2019年インターハイで日本一を経験している鈴木監督に対し、宮澤監督も横浜創英を2度インターハイへ導いているものの、選手権予選は今回が初の決勝進出。試合直後、鈴木監督は宮澤監督の下へ向かって握手をかわし、「もう心から勝利は称えたいと思うし、僕の悔しさとはまた別だから、ぜひ頑張ってもらいたい」とエールを送っていた。 横浜創英の宮澤監督は選手権予選では初となる桐光学園からの勝利について、「僕はもうずっと桐光学園の背中を見て……(彼らの)黄金時代に僕らは生まれた部活(2002年創部)なので、背中をずっと見てきたんで、そういう意味では1回だけですけども、選手権で勝ったのはホッとしているというか、この後色々な気持ちが出てくるのかなとは思います」とコメント。一方で今年のチームが歴史を変えたことへの驚きはないようだ。 宮澤監督は「僕も20年弱やっていますけど、これだけサッカーにきちんと向き合える子たち、こういう代はほんとに初めてで。ほんとに育ったっていうよりは、入学した時からそういう子たちだったので、ほんとにスタッフ陣はこの子たちの代では必ずある程度の結果を出してあげなきゃいけないよねっていう話はずっとしてきてはいたんです。まだあと1試合あるので、結果はまだ出ていませんけど、その意味では初めて決勝まで来ましたけど、必然というか、このぐらいまでは来るだろうという想定はしていました」と語った。 今年は1月の“裏選手権”(ニューバランスカップ)で準優勝すると、関東高校大会予選で準優勝し、関東高校大会もBブロック優勝。川上を筆頭に意識の高い3年生たちが筋トレ、食事にも気を配りながら意識高く成長を続けてきた。過去2年の桐光学園戦はゲームを支配される時間が長かったというが、「今年はやっぱり自分たちの色を出そう」(川上)とチャレンジ。ポジショニングと判断にこだわりながら繋ぐ「創英スタイル」を前半から披露し、2点を奪った。後半は思うように繋げず、押し込まれたことも確かだが、宮澤監督は「0で抑えれたということは、しっかり褒めてあげたいなと思います」。また一つ成長して決勝への切符を勝ち取った。 和田は決勝へ向けて「創部以来初なんで、絶対に次来る相手も倒して全国行きたいです」と語り、川上は「この代は最高の代なので、自信を持って決勝に向かっていきたいと思っています」と力を込めた。勝ち取ったチャンスを逃さず、もう一つ歴史を塗り替える。
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