“オスカーは真っ白”なのか? 批判が噴出する米アカデミー賞の実状は
そもそも「アカデミー」会員になる基準は?
映画芸術科学アカデミーの会員数や人種構成などに関しては前述のとおりですが、そもそもどのようにしてメンバーになるのかという疑問が残ります。アカデミー会員は、それぞれの職種に適した17の部門のどこかに所属します。17部門には俳優や脚本家、監督、編集から、衣装やヘアスタイリスト、映画会社役員といったカテゴリーまで存在します。それぞれの部門には異なる規約があり、17部門のいずれにも入会できない映画関係者に対しては、「無任所会員」という特別な枠も設けられています。 俳優部門でアカデミー会員になる場合、少なくとも過去に3本の劇場公開映画にセリフのある役で出演していることが前提で、そのうちの1本は過去5年以内に公開されていることが条件です。さらに、出演作が「アカデミーの高い基準を満たすものでなければいけない」という、数字などでは測りえない、曖昧な基準が存在します。監督にしても同様で、少なくとも2本の作品で監督をつとめ、そのうちの1本は過去10年以内に公開されたものという基準があります。俳優同様に、監督にも携わった作品が「アカデミーの基準を満たしているか」どうかという判断が行われます。 また、長いキャリアを持ち、話題作やヒット作に関係していたとしても、個人で入会希望を出すことはできません。アカデミーの入会希望者は、まず自分が入会したい部門に所属するアカデミー会員2名から推薦してもらう必要があります。その後、その人物がアカデミー入会に適しているか否かが、各部門内に設けられた委員会で協議され、アカデミーへの入会にふさわしい人物と判断されると、部門を通して理事会に推薦されます。 これには例外もあり、アカデミー賞で何らかの部門にノミネートされると、推薦人等のプロセスなしで理事会が直接入会について判断を下します。入会を認められると、アカデミー会員の資格は生きている限りは更新する必要のない永久資格となります。
アカデミー賞主催団体は改革案を発表したが
最初のアカデミー賞授賞式が行われたのが1929年。英エコノミスト誌によれば、20世紀中にアカデミー賞の各部門でノミネートされた俳優の95%が白人でした。2000年以降だけで見た場合、ノミネートされる黒人俳優は全体の10%にまで増えたものの、ヒスパニック系俳優のノミネートは全体の3%で、アジア系俳優にいたってはわずか1%という現状です。映画芸術科学アカデミーは22日にアカデミー内部の多様化を推し進めるための計画を発表しましたが、アカデミー賞のノミネートと多様性をめぐる議論はすぐに決着がつく話ではなさそうです。 (ジャーナリスト・仲野博文)