阪神が侍Jに教えてくれた豪州攻略のヒント
阪神が4日、京セラドームで行われたWBC強化試合で侍ジャパンに続き豪州代表まで3-0で下した。特に注目を集めたのは、先発の能見から青柳、島本、松田、高橋、藤川の5投手による完封リレー。散発5安打で13三振を奪った。対豪州に有効だったのがフォークボール。金本監督も、「変化球にはもろい」と、8日の第二戦で豪州と対戦する侍ジャパンにとってありがたり金言を残した。 先発予定の菅野(巨人)もフォークがあるがワンシームや今季取り組んでいるチェンジアップなどの変化球での揺さぶりが攻略のヒントになりそうだ。またアスレチックスの現役メジャー、リアム・ヘンドリクス投手が、本人の申告で豪州代表を辞退したことも明らかになった。重要な中継ぎの欠場も含めて侍ジャパンに追い風が吹いてきた。
象徴的なシーンがあった。 3回だ。阪神の先発、能見は、この回、先頭のハーマンを追い込むと、フォークを3連投。うち2球はワンバウンドになったが、それでも3球目が、絶好のポジションから落ちるとハーマンは手を出した。スイングアウト。能見は、続くデザインミゲル、ホワイトフィールドという2人のマイナーリーガーをいずれもフォークをウイニングショットに三者連続三振に仕留めた。二回一死から5連続三振である。 この日、能見は6つ、青柳からつないだ5人で7つの三振を奪ったが、そのうち9つがスイングアウト。藤川球児は、144キロのストレートで取ったが、左腕の島本はフォーク。やはり落ちる球のイメージが豪州打線を困惑させたことは間違いない。 侍ジャパンに続き、豪州代表まで撃破した金本監督は、試合後「真っ直ぐには強いなという印象を持った反面、変化球にはもろいな」と、攻略のヒントを口にした。 許した5本のヒット中、2本は2年前にヤクルトでプレーしたデニングがマークしたもの。日本野球のフォークに慣れたデニングには、免疫はあったのだろうが、ボールや肘への負担から挟み球を多用しないメジャーや豪州でプレーしている選手にしてみれば日本式フォークの洗礼はショックだったのかもしれない。 豪州のディーブル監督は、「早いカウントでのストレートを見逃し、追い込まれた後にスプリット(フォーク)でやられた。試合前には、選手に、早いカウントからファーストストライクを打つアプローチをしようと話したが、違う結果になってしまった」と、フォーク対策を練ったにもかかわらず通用しなかった裏事情を明らかにした。 「ストライクゾーンの感覚も違った。ボールをストライクと広く取られた」という不満も漏らしたディーブル監督は、「キレのいいスプリット(フォーク)を、わざと見逃したんだ。本番までに(攻略は)取っておくよ」と、冗談半分に強がって見せた。だが裏を返せば、日本式フォークに対する苦手意識に他ならない。 阪神は、最高の豪州攻略のお手本を見せてくれたことになる。 ただ、能見をリードした坂本が、「ストレートが切れていたのでフォークを勝負球にしようと能見さんと話しをしました」と語ったように、豪州戦に先発予定の菅野のストレートに球威があることが、落ちる球を生かすための条件にはなるだろう。 阪神がくれた豪州攻略ヒントはこれだけではなかった。スタメン出場2試合目となる鳥谷が、豪州の一部投手陣の致命的な弱点を衆前にさらけ出してくれたのである。