映画『室井慎次』開いた扉、青島の登場が“新たなる希望”に 亀山千広プロデューサーを直撃
公開中の映画『室井慎次 生き続ける者』に、「踊る大捜査線」シリーズの青島俊作(織田裕二)が登場することが公式発表された。「当初の台本にはなかった」という青島のシーン。「踊る」シリーズの亀山千広プロデューサーが、その撮影の裏側を明かした。 【動画】『室井慎次』メイキング映像に映る撮影現場に織田裕二も来ていた 1997年の連続ドラマ開始以来、それまでの刑事ドラマとは一線を画し、警察内部の縦割り社会や上下関係、人間模様を描き、社会現象を巻き起こした『踊る大捜査線』。その後、映画シリーズ化され、スピンオフ作品を含む6本の累計興収は、487億円、累計動員数3598万人を超え、「踊るプロジェクト」はまさに伝説となった。 そして、『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』(2012年9月7日公開/興行収入59.7億円/動員471万人)以来、12年ぶりに公開されたのが、『室井慎次 敗れざる者』『室井慎次 生き続ける者』。連続ドラマの最終回で、所轄の刑事・青島と、キャリア官僚・室井が交わした“約束”。それから27年経って、“青島との約束”を果たせなかったことを悔やみ、警察を辞めて故郷・秋田に帰った室井の“最後”の物語を描いている。 『室井慎次 生き続ける者』に青島が登場したこと、さらに「still continue」の文字。12年前の「THE FINAL」はなんだったのか。 ■「室井慎次」をちゃんと終わらせたかった ――青島が登場するのかしないのか、公開前は憶測が飛び交っていましたが、やはり登場しましたね。 【亀山】あらかじめ言っておくと、今回のプロジェクトは「踊る」の“再始動”ではなかったんです。『室井慎次』のために動き出した。はじまりは、一昨年の年末、君塚(良一)さんからの一本のメールでした。普段あまりメールでやり取りしていない君塚さんから突然、「室井の終焉を書きたい。室井をちゃんと終わらせたい」と、本広(克行)監督、君塚さん、亀山の3人で仕事ができればいいなという内容でした。 『踊る大捜査線』の青島をはじめとする湾岸署は、ある種のファンタジーでした。そこに、警察組織のリアリティーを持ち込み、物語に深みを与えてきたのが、室井慎次をはじめとするキャリア組でした。『THE FINAL』で組織改革委員会に命じられたところまで進みましたが、その後、組織が改善されたのか、青島との約束は果たせたのかまでは描かれていない。室井もそろそろ定年を迎える年齢になり、このまま自分が書き続けたキャラクターが中途半端に終わってしまうことに責任を感じていたようです。 僕にもその責任はあると思っているし、本広監督も背負っている。誰よりも柳葉敏郎さんが「室井」を背負い続けていることがずっと気になっていました。柳葉さんは室井慎次という役を大切にしてきた一方で、それにしばられてきたと言ってもいい。君塚さんは、「室井を終わらせることで、柳葉さんからその重荷を降ろしてあげたい」と強く語っていました。 ――柳葉さんを説得するまで大変だったという話は、すでにいろいろなところでお話されていますが、織田さんはどうだったのでしょうか? 【亀山】柳葉さんは、室井は自分にとってしんどいキャラクターだから、絶対に嫌だ。今さらなぜ室井なのか、俺を説得しろ、というので、かなり時間がかかり、途中でけんかもしました。柳葉さんがようやく前向きになってくれた時、気にされていたのが「織田くんはちゃんと知ってるんだよね」ということでした。「織田くんがNOだったら俺はやらないよ」と言われたので、それに関しては「大丈夫です」と即答しました。 なぜなら、柳葉さんを説得している一方で、過去の映像素材を使う許可取りは進めていたからです。室井の27年間の集大成を描くうえで絶対必要ですからね。いの一番の織田さんのところに連絡して、許可はもらっていました。だから、柳葉さんがどうしてもNGで、なかったことにしてくださいと言いに行く羽目になったら面目ないな、と内心ヒヤヒヤしていました。その後、作品自体にも青島を出したいという機運が高まり、織田さん本人ともお話しして、今回の出演となりました。