【視点】米事務所 疑惑の徹底追及を
沖縄県が米国に設置したワシントン駐在事務所を巡って大きな疑惑が浮上している。事務所の組織形態が県の出先機関ではなく、県が100%出資して設立した株式会社だったことが明らかになったのだ。 この実態を県民は知らず、県が出資法人に関し、地方自治法上必要な県議会への報告を怠っていた可能性も強まった。 野党勢力が多数を占める県議会は沖縄復帰後初めて、前年度の一般会計決算を不認定とした。自民党など3会派はプロジェクトチームを設置して監査請求を行ったが、疑惑の徹底追及が必要だ。 「オール沖縄」県政の順法精神が疑われる場面は、これまで何度もあった。 玉城デニー知事は、米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡り、設計変更申請の不承認を違法とした最高裁判決に従わなかった。 移設工事現場の周辺では最近、事故による死者が出たほど危険な抗議運動が行われているが、県が反対派に自制を呼び掛けたこともない。そして今回の問題である。 ワシントン駐在事務所は2015年、当時の翁長雄志知事が辺野古移設反対を直接米政府に働き掛けるため設立した。当初から政治色が強い組織である。 県は非営利法人としての登録を検討していた。だが米国で政府機関への働き掛けなどのロビー活動を行うには株式会社が適当という弁護士の助言を受け、株式会社を設立。出資金は県が委託業者に支払った委託料から充てた。 事務所の職員は株式会社の社長、副社長の肩書で活動している。一方で米政府に対しては、職員と沖縄県の雇用関係を否定する虚偽の書類を提出していたという。 県は発行した株式を公有財産として登録しておらず、決算書類にも記載していなかった。8年間にわたり県民や県議会のチェックをすり抜けていたことになる。 事務所には年間1億円近い税金が投入されているが、業務は現地コンサル会社に丸投げだったとの報道もある。 そもそも事務所の設置は、辺野古移設に反対する前知事の実績づくりが目的だったのではないか。前知事の政治的思惑を優先するあまり、法的な問題をクリアしないまま事務所の設置を強行したことが問題を大きくした可能性がある。 県議会で決算認定に反対討論した自民党の座波一県議は「本質は沖縄県民の血税や公金を使った基地反対活動。辺野古反対のためなら法をおとしめてもよい、その姿勢こそ厳しく批判されなくてはならない」と糾弾した。 自民党が指摘するように、この問題は8年前の県職員による事務的なミスで済ませてよい話ではなく「オール沖縄」県政そのものの体質を象徴していると言わなくてはならない。 与党は沖縄の基地被害を米国に訴える上で、事務所が果たした役割を評価する。だが今後、県議会で事務所の存廃を巡る議論が激しさを増すのは必至だ。 一般県民の感覚からすると、この状況で事務所の存続は認められない。県議会は事務所の功罪を厳正に検証し、県民が納得できる結論を見出してほしい。