『虎に翼』森田望智が“花江を超えた”瞬間 「お芝居の楽しさってこういうところ」
「優未に決めさせないで」に込められた花江の思い
――ちなみに、カメラが回っていないときの森田さんと伊藤さんの関係性はいかがでしょうか? 森田:どうなんだろう……でも、花江ちゃんとトラちゃんが普通に話しているときのような感じです(笑)。ドラマでは花江ちゃんがトラちゃんにツッコんでいますけど、私が沙莉ちゃんにツッコまれたり。そういう違いはありますが、そんなに変わらないですね。 ――第15週では花江にスポットが当たりますが、特に第72話、73話では寅子がいない裏の物語が描かれています。 森田:子どもたちもトラちゃんだから態度を変えているということではなく、花江と同じようにトラちゃんを外で働くお父さんのように見ていたんだと思います。どの家庭でも母親の前での自分と父親の前での自分というものがあると思いますし、そういう感じかなと。実際の花江にとってはトラちゃんの子どもである優未(竹澤咲子)に対しては「決して私の子どもではないから、母親のようにしてはいけない」という思いもあったりするので、すごく複雑な回なんです。台本に「怒っている」と書かれていても、“悲しんだ怒っている”もあるし、“少し諦めの怒っている”もあるし、吉田(恵里香)さんの脚本はいろんな感情を想像させてくれるんですよね。誰か一人に責任がある、というような単純な話ではなく、トラちゃんの気持ちもわかるけど、花江ちゃんの気持ちもわかる。その2人がぶつかるから、どっちの気持ちもわかる、というのが魅力的だと思っていて。第15週では、そんな花江ちゃんとトラちゃんの思いが強く出ている週となります。 ――寅子が優未を新潟に連れて行くか、行かないかという話し合いの中で、花江は寅子に「優未に決めさせないで」と伝えます。花江の中には、どんな思いがあったのでしょうか? 森田:(猪爪家では)自分で決める“主体性”が尊重されることが多いんですが、この場合はどっちの選択をしたとしても、優未ちゃんは「自分が決めたせいで……」となってしまう。花江としては、どの選択肢を選んでもハッピーなときには自分で決めた方がいいと思うけれど、どの選択肢を選んでもどこかで「私のせいだ」と思ってしまうときが来るとしたら、それは子ではなく親が負う責任だよね、ということだと思います。小さい子どもたちに傷ついてほしくない、という気持ちもありますし、トラちゃんにも覚悟を持ってほしい。「あなたの気持ちで決断をするのだから、ちゃんと解決して優未のことを思ってね」という希望を持ってのセリフでもあるなと思っています。 ――そんな花江と子どもたちの空気感も素敵です。最後に、直明役の三山凌輝さんの印象や、子どもたちに対して森田さんご自身が「かわいいな」と感じるところを教えてください。 森田:それはもう、たくさんあります(笑)。三山さんは子どもに対しても大人に対してもずっと同じ対応をし続けてくれる、エネルギーあふれる方なんですよね。第15週のときには、私がお芝居的に大変で沈んでいても、ずっと同じテンションで現場にいてくれていたことが心の支えになっていました。子どもたちともよく遊んでくれたりして、本当に直明くんと、直人(琉人)、直治(楠楓馬)、優未ちゃんの関係性そのままだなと思うところがあります。それから直人も直治も、台本上のセリフはそれほど多くなくても、完成した映像では2人の声はたくさん入っていますよね。2人が自然に発した言葉が、そのまま生かされているんだと思います。すごくナチュラルでお芝居に入っても入らなくても変わらないんです。私としてはそこにとても助けられましたし、直治くんがクランクアップのときに、虎の折り紙を折ってお手紙を書いてくれたりもして。歴代の優未ちゃんからはお守りをもらったり、前室で一緒に折り紙を折ったり。そういう楽しいな、かわいいな、と思う気持ちがお芝居にも自然と出ているんじゃないかなと思うので、私だけではなく、みんなに作ってもらった関係性だなと思っています。
nakamura omame