「内密出産」初事例から3年で計38件に 九州以外が6割超 熊本市の慈恵病院
慈恵病院(熊本市西区)は28日、病院のみに身元を明かす「内密出産」が2021年12月の初事例から3年で計38件になったと発表した。このうち九州以外から来院しての出産が25件と6割を超えている。病院は「来院までに母子の健康リスクがある」として、各都道府県に対応できる医療機関の設置を訴えた。 こうのとりのゆりかご
23年12月の前回発表後、1年間で最多となる17件の出産があった。熊本県内在住の母親3人が初めて出産した。生まれた赤ちゃん1人が初めて病死したことも明らかにした。出産時は健康だったものの体調が悪化し、生後5日目に肺炎で亡くなった。 3年間に出産した母親38人のうち、初診から出産まで24時間未満だった女性は7人。32人は産婦人科の受診歴がなかったが、母体に緊急性の高い処置が必要な事例はなかった。 年代の内訳は19歳以下が9人、20代が26人、30歳以上が3人。地域別では熊本以外の九州が10人、関東が13人、近畿が5人、中国・四国が4人、東北が2人、北海道が1人。病院までの移動手段は新幹線が26人、車が5人、バスが4人などだった。 内密出産を選んだ理由で最も多かったのは「母親に知られたくない」の17人。「両親に知られたくない」が11人、「家族と行政に知られたくない」が6人で続いた。
出産後、14人が匿名を撤回した。うち6人は特別養子縁組を希望し、それ以外は実親や里親が子どもを養育したり、乳児院に入所させたりしているという。匿名を維持した24人は、全員が保険証などの身元情報を病院に残し、子どもは児童相談所に保護された。 病院で記者会見した蓮田健院長は、内密出産の増加について「報道などで認知が進んだためではないか」と説明。「陣痛でパニックになる前に女性を保護できる意義のあるシステムだ」と改めて強調した。(丸山伸太郎)