大ヒット公開中「ディア・ファミリー」プロデューサーが第96回アカデミー賞視覚効果賞受賞「ゴジラ-1.0」を振り返る「自由度と日本映画の未来」
ドメスティックなゴジラが支持された
一連の渡米、活動を経験して分かったことがいくつもあった。「外国語の映画をハリウッドで上映することはいかに難しいか」。公開時の館数への対応でも「日本のアニメはかなり浸透しているが、実写映画は戦略的なチャレンジが必要」と実感した。 ただ「ゴジラ」は米国版のゴジラ作品もあり「ファンに支持されていたことも貢献し、外国映画の壁をこじ開ける形になった。アメリカ人が日本の実写映画を見る体験に一役買えたらうれしい」と満足げに話す。それに加え、今回の「-1.0」は戦後間もなくの日本が舞台で、「ドメスティックな映画を作ったことで、秀でて見えた部分もある」とみている。「ハリウッドっぽい映画を作っても横に並ぶだけ。日本らしさを極めたのがアメリカ人に刺さったのではないか。日本の実写コンテンツが通用した意味は大きい」と分析する。 渡辺謙も出演した2014年の「GODZILLA ゴジラ」(ギャレス・エドワーズ監督)が「『ゴジラ-1.0』が米国で受け入れられたことに大きく寄与した」と見ている。海外版ゴジラ映画の1本で、アメリカ版「ゴジラ」としては2作目だった。「ゴジラはキャラクターとして許容範囲が広い。どんなゴジラを描いても受け入れられるキャラクター性、さまざまな側面がゴジラにはあって、自由度が高い」と改めて感じることができた。
〝ハードル〟はクリエーティブを生む
アカデミー賞を受賞し日米で大ヒットとなれば、次作へのハードルは相当高くなるのではないか。この問いに、岸田は国内版前作「シン・ゴジラ」(16年)も「そうだった」と語り始めた。「『シン・ゴジラ』は国内で大ヒット、各賞を受賞するなど評価も高かった。その後だっただけに、社内外、特に社外の人から『よく作るねー』と再三言われた。『よくやるね』と言った人から『よくやったね』と言われるのを目標の一つにした」 「前の作品がハードルになることは、充実したクリエーティブを生んだ。興行面の充実、賞の評価はたくさんあったほうがいい。超えるのは難しいチャレンジだが、そうならないと作品がより高いものになっていかないから」というのだ。「『シン・ゴジラ』と逆のことをしよう。民間(人)を描き、主人公の人間性にもアプローチする」。それが「ゴジラ-1.0」。「前作に引きずられるのが一番良くない」と言い切った。 ゴジラは東宝の看板シリーズの一つでメインストリームでもある。「小学生の時、父とレンタルビデオ屋さんに行って、よく借りたのがゴジラシリーズの作品だった。かっこいいと思ったし、映画館でもよく見た。生粋のゴジラオタクとは言えないがゴジラが好きだった」と自身の体験がベースにあった。「映画を作りたいと考えて東宝に入ったのだから、いつかやりたいと思って虎視眈々(たんたん)と狙っていた」としてニンマリする表情を浮かべた。
映画記者 鈴木隆