大ヒット公開中「ディア・ファミリー」プロデューサーが第96回アカデミー賞視覚効果賞受賞「ゴジラ-1.0」を振り返る「自由度と日本映画の未来」
第96回米アカデミー賞視覚効果賞を受賞した「ゴジラ-1.0」は、日本映画がアニメだけでなく実写作品でも興行、クオリティーの両面で世界に通用することを強く印象付けた。プロデューサーとして企画、製作のみならず、アカデミー賞という舞台でロビー活動や選考への対応、興行など世界規模の映画製作とその側面を体験してきたのは東宝のプロデューサー、岸田一晃だ。最新作「ディア・ファミリー」でも自身初の実話の映画化でその手腕を発揮している。 【写真】「ゴジラ-1.0」に登場する局地戦闘機「震電」の試作1号機。プロペラが機体の最後尾にあるのが特長 岸田は昨年10月以降、何度も渡米。アメリカでの興行とアカデミー賞の現場を見てきた。「アカデミー賞にかかわるさまざまな体験、視点、発想の転換など学ぶべきことばかりだった。受賞までの5カ月間が2年ぐらいに感じられた」と濃密な経験だったことを明かした。映画製作を統括するプロデューサーとして、日本映画の将来に通じる経験の一端を語ってくれた。
濃密だったロビー活動
「ゴジラ-1.0」は昨年11月中旬、LA(ロサンゼルス)プレミアが行われ、12月に公開された。当初与えられた上映期間は3週間ほど。スクリーン数は約2300だったという。しかし、予想以上に大ヒットし、アメリカでの興行収入は5600万ドル、約八十数億円に達した。北米で公開した日本の実写映画では過去第1位、北米公開の外国語映画でも歴代3位という好成績を収めた。 アカデミー賞では視覚効果賞独自の選考を経てノミネート、受賞にいたる。最初のリストに残っていた時から「本気で取りにいった」と話す。20本のリストに残るために、VFXなどをどう使ったかと5分の映像を提出、そこをクリアすると、ショートリスト10本に残るための長めの動画とともに監督の解説を入れたものを提出する。どこがVFXか実写かが分かるように説明し、理解してもらう選考方法になっていた。 いわゆるロビー活動の一環で、山崎貴監督もアカデミー会員向けの試写会のティーチインやイベントなどに多数参加した。こうした準備や現地での活動には、LAにオフィスを構える東宝の関連子会社・Toho internationalと東宝の旧国際部であり分社化したToho Globalなどがサポート。岸田も昨年10月から今年2月、特に1月、2月には何度もロサンゼルスに足を運び「とんでもなく貴重な時間を過ごした」と話した。