参加者1名でも闘い続ける 「人生を豊かにしてくれた競技」で常に成長を追い求める52歳
2022年度大会の参加者は1名で23年は2名、そして今年はまた1名。地方予選ではない。日本一を決める選手権試合でのエントリー総数である。そんな、人口が極めて少ない競技において、その灯を守るかのごとくステージで闘い続ける選手がいる。 【写真】高田巌選手のアクロバティックなステージング
「私がこの競技を牽引していると言われると荷が重いのですが(苦笑)、とにかく愉しみながら参加させていただいています」 ボディコンテストのカテゴリーの一つに「メンズフィットネス」という競技がある。衣装を身に着けて90秒以内のパフォーマンスを行う「パフォーマンスラウンド」、鍛えられた体型の完成度が審査対象となる「フィットネスラウンド」の2ラウンド制で争われる、いわば“動けるかっこいいカラダ”を競うコンテストだ。8月11日、福井で開催されたメンズフィットネスの日本一を決めるオールジャパン選手権大会。そこで3連覇を達成したのが、フィットネスインストラクターの高田巌(たかだ・いわお/52)選手である。 「年齢を重ねていくと、身体能力や持久力等どうしても落ちていくと思います。そうした中でも、動ける筋肉と魅せる筋肉のバランスの作り方や競技とパフォーマンスの難しさがありますが、それらをキープするための一つのモチベーションになっているのが、オールジャパン選手権です」 高田選手がトレーナーに勧められてメンズフィットネスに初めて出場したのは2015年、43歳のとき。それまでコンテストにはまったく興味がなかったものの、デビュー戦の大阪大会(キングオブフィジーク)でいきなり優勝。そして、翌年のオールジャパン選手権で優勝。52歳になった現在も、ディフェンディング王者として出場を続けている。 「最初は何も分からずに出場したのですが、1位になって以降は重圧との闘いでした。1位になったら、そこから先の自分の居場所は『1位』しかないんです。開催当初は8名ほど参加があったのですが、参加者が私1人だったとしても、見ていただいた方に『昨年よりも今年のほうがよかった』と、言われるように心がけたいです」 そのためには自分自身が常に進化を追い求めるしかない。ボディビルのポージング練習会やダンスレッスンなど、毎年、次のオールジャパン選手権に向けて新たな分野にチャレンジし、去年から今年にかけては体操教室にも通ったとか。おかげで、メンズフィットネスという競技に出会ったからというもの、趣味の幅がかなり広がったという。 「それに、50歳を過ぎているのですが、体力が落ちたという実感がないんです。逆に、年齢を重ねるにつれて、身体の使い方と付き合い方がうまくなってきたかな?と感じています」 高田選手にとって、メンズフィットネスは「自分の人生を豊かにしてくれた競技」。闘い続けるための理由が、そのステージにはある。
【JBBFアンチドーピング活動】JBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)はJADA(公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構)と連携してドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト団体で、JBBFに選手登録をする人はアンチドーピンク講習会を受講する義務があり、指名された場合にドーピング検査を受けなければならない。また、2023年からは、より多くの選手を検査するため連盟主導で簡易ドーピング検査を実施している。
取材:藤本かずまさ 撮影:中島康介