30年前に佐賀VS鹿児島の九州決戦で劇的満塁弾…次男は鹿児島の神村学園から甲子園へ 佐賀商で94年夏Vの西原正勝さん「びっくりですよね」
◆第96回選抜高校野球大会1回戦 神村学園6―3作新学院(22日・甲子園) 【記者コラム】 ■当時の父の満塁本塁打【写真】 神村学園の応援団が陣取る一塁側アルプススタンドに、背番号14をつける控え内野手の西原維吹(2年)の父、正勝さん(48)がいた。年齢相応の貫禄が付いたものの、高校時代の面影は残っている。 高校野球ファンは名前で分かる人もいるだろう。1994年夏、決勝では初の九州勢対決となった佐賀商と樟南(鹿児島)の一戦で、同点の9回に劇的な満塁本塁打を放った佐賀商の2番打者だ。 「満塁本塁打はもちろん覚えていますよ。あのキユーピーマヨネーズの看板の所に入りましたよね」。西原さんはバックスクリーンから左翼寄りに位置する看板を指さした。 4強入りした昨夏、1年生だった息子とともに甲子園に応援に来た。「甲子園に来たのは25年ぶりぐらいでした。ネット裏のスタンドとか、甲子園もだいぶ変わりましたよね」とアルプススタンドから思い出の球場を見回した。 佐賀市で暮らす西原さんは2男1女の父。2人の息子は小学生で野球を始めた。小学生、中学生の時は所属する野球チームでコーチを務めた。長男は母校の佐賀商へ。そして次男の維吹は自らの意思で神村学園に進んだ。 自宅を離れての寮生活にも「自分で決めたことですから反対はしませんでした。でもびっくりですよね」。自身は鹿児島の学校を倒して夏の頂点に立ったにもかかわらず、30年後の甲子園では鹿児島の高校で出場した次男を応援するのだから、人生は分からない。 昨夏に甲子園を訪れた際は、伝説的な満塁本塁打のシーンがビジョンで流れていた。「他の保護者たちも知らなくて、『え、これ西原さんなの』って言われました。アウェー感を感じましたね」。鹿児島の学校を倒した佐賀商の映像に、周囲には何ともいえない雰囲気が漂っていたという。 作新学院との初戦、ベンチで試合を見つめた維吹は「一つのプレーで流れが変わる甲子園の怖さを感じました」と聖地の雰囲気を肌で感じていた。父の高校時代の快挙は、小学生の時に周囲から聞いて知った。 「面と向かって言ったことはないけど、尊敬しています」。父への秘めた思いを明かした。甲子園でさらにそのすごさを感じたことだろう。今後も勝ち進めば、2年生の維吹にも出場機会があるかもしれない。 「ここで勝てたことが人生の役に立っていると思うし、甲子園で経験できたことが自分にプラスになる。息子も甲子園の経験がこれから先の人生につながればと思います」と西原さん。勢いに乗って勝ち上がった30年前を「楽しかった」と振り返る。今度は息子を見守る父として、聖地を楽しむつもりだ。(前田泰子)
西日本新聞社