「トランプ関税」でインフレは悪化する、ハリスや専門家が主張
米共和党の大統領候補であるドナルド・トランプは、再選されれば海外からの輸入品に対して大幅な追加関税を課す考えを示している。これに対し、民主党の大統領候補のカマラ・ハリスは、この計画を「トランプ税」として批判し、物価の高騰を招くものだと主張している。 経済学者の多くもハリスの見方を支持しており、彼らはトランプの政策が、米国民の負担を増すと考えているが、トランプはこれに反論している。 トランプは、関税の引き上げが「我々をだまし、仕事を奪う他国を罰するものだ」と演説で述べている。彼は、すべての国からの輸入品に一律10%の追加関税を課し、中国からの輸入品には60%の追加関税を課す案を提案している。これに対し、調査会社ウルフ・リサーチがまとめた、現在の米国の平均実行関税率(輸入額に占める関税額の割合)は、中国を除く国からの輸入品で1%前後、中国からの輸入品では11%となっている。 ハリスは、演説の中でトランプの計画が、日用品や生活必需品の価格を高騰させる、「トランプ税」になると批判している。 専門家の多くも、関税の引き上げが消費者の負担を増すと指摘しており、ゴールドマン・サックスのエコノミストは、関税率の1%の増加ごとに物価が0.1%上昇し、インフレ率を引き上げると予測している。さらに、輸入品の価格が上がるだけでなく、国内製品の価格も競争の減少によって上昇するとしている。 経済学者たちもトランプの関税政策が米国経済に悪影響を与えると広く信じており、無党派のシンクタンクであるピーターソン国際経済研究所(PIIE)の分析は、この提案が「米国経済に深刻な副作用をもたらす」と分析し、「消費支出の減少や失業率の上昇、経済成長の悪化」などを招くとした。 ムーディーズも、トランプの関税計画が米国の雇用を67万5000人減少させ、失業率を0.4%上昇させると予測し、チーフエコノミストのマーク・ザンディは、「トランプが提案通りに関税を引き上げれば、経済はその直後に不況に陥る可能性が高い」と4月のCNNのインタビューで述べていた。 ■中間層の負担は年間「最大57万円」 PIIEは、トランプの関税によって中流家庭が負うことになるコストが年間1700ドル(約25万円)に達すると推計した。PIIEはまた、トランプの関税が所得額が下位50%に属する米国家庭の課税後所得を約3.5%減少させるとも述べている。 さらに、左派寄りのシンクタンク、アメリカ進歩センター(CAP)は、トランプによる10%と60%の関税によって中流家庭の年間コストが2500ドル(約37万円)増加すると予測し、ほとんどの輸入品に20%の関税が課された場合にはその負担が3900ドル(約57万円)に上昇すると予測した。