自宅の空にも不動産価値が!? これから訪れる空間を売買する時代を解説
空間コンピューティングで感じる都市開発の可能性
渡邊 Apple Vision Proはパーソナルデバイスなので、基本、自分一人で楽しむもので、設定も一人一人に合わせないといけない。でも、100台、200台と複数繋いで、みなさんに同時に同じものを見ていただくこともできます。複合型施設などで、みんなで体験できたら面白いですよね。佐藤さんは、どんなことができそうだなと感じていますか? 佐藤 そうですね。東急グループでは、渋谷駅を中心とした半径2.5キロ圏内を「広域渋谷圏」と定め100年に一度の大型再開発を進めています。都市開発と、魅力向上の取り組みの両面から渋谷の街づくりを進め、もっともっと盛り上げていければと考えているんですが、それにはハードの開発に加えてエンタメなどソフトの要素も必要だと感じています。モノを作るだけではなくて、ソフトも同時に作っていけば、体験の強度をさらに高めることができる。渋谷を訪れた人が、「想像より楽しかった、面白かった」と感じていただけることに重点を置いているんですよね。 渡邊 なるほど。「楽しかった、面白かった」と思ってもらえるコンテンツの中で、これまで実現できなかった体験を空間コンピューティングで何かできないか、ということですよね。 佐藤 その通りです。都市開発の中で、循環をしていくためには大事なポイントが3つあると思っていて、それが「創造・発信・集積」なんです。最初に、まだ誰も体験したことがないものを創造する。そしてそれをいい形で発信して、みなさんに知っていただく。それが話題性になって、口コミも増え、多くの人が集まり集積する。それがまた新たな創造に繋がっていく。「この3つのポイントをぐるぐる回していこう!」ということを考えながら街づくりを推進しているので、「ハコ」を作る仕事ではなく、「人の集積に繋がるハコ」を作る仕事がしたいなと考えています。 渡邊 いいですね。不動産は、土地の価値を上げるビジネスじゃないですか。現時点で価値があるのは、あくまで地面という平面。その価値を、空間にまで拡張できると私は思うんです。今までx軸とy軸のみだった基準に、z軸が追加されるイメージなんですが。 佐藤 できると思います! いわゆる外壁広告というか、屋外広告のさらに進化版ができそうですよね。今の時点でも、その壁にどれだけ視線が集まっているかどうかで、壁の価値は上がります。見る人数が多い壁は、価値が高い。それが空間コンピューティングが当たり前になる時代に突入したら、本来何も掲示できない場所にも広告を打つことが可能になると思うんです。 普通、窓があったらそこには何も貼れないじゃないですか。でも空間コンピューティングで窓に広告を貼れるようになったら、どんな壁や窓にも広告を出すことが可能になりますよね。つまり「空間に広告を打つ」という選択肢が出てくると思うんです。しかもその広告はパーソナライズすることも可能なので、同じ壁でも、人によって見える広告を変えられる。それが実現したら、それはものすごい価値を生むようになると思います。 渡邊 今の時点では、空間自体って登記できないし、空間を売買することはできないし、貸したりもできない。他人の土地の上の空間を勝手には使えませんが、空間コンピューティングによって、空間の価値を数値化することができませんかね? 佐藤 十分でき得ると思います。「そこの土地は俺のものだ!」ではなく、「そこの空間は俺のものだ!」みたいな会話も起こりそうですよね(笑)。極論を言うと、今まで価値を見出せなかった不動産に価値が与えられることになると思うんです。これは決して大袈裟ではありません。可能性を感じますね。