【LiLiCoのこの映画、埋もらさせちゃダメ!】今年見たアジア映画では私的暫定一位です『ビニールハウス』
TV『王様のブランチ』で2001年から映画コメンテーターとして出演するほか、マルチに活躍されているLiLiCoさん。これまでも数々の映画をナビゲートしてきたLiLiCoさんに、「これは絶対に観逃してほしくない!」という“埋もらせ厳禁”な映画について語っていただきます。 【全ての画像】『ビニールハウス』『パスト ライブス/再会』
ラストなんて本当にびっくりで、私は腰が抜けました
今月は春休みの大作映画がいくつも公開されるので、埋もれてしまいそうな素晴らしい作品をふたつ紹介します。まずは3月15日から公開されている韓国映画『ビニールハウス』。キャッチコピーにある「半地下はまだマシ」という言葉に違わず、とてつもない負のスパイラルがキモのサスペンスです。 貧しさゆえに農耕用のビニールハウスで暮らしているムンジョンは、少年院に服役している息子といずれ一緒に暮らすことを夢見て、その資金を稼ぐ毎日。盲目の老人テガンとその妻で重度の認知症を患っているファオクの訪問看護師として働いています。 ある日、ファオクがお風呂場で暴れ出してしまい、ムンジョンともみあっている最中、運悪く頭を打って他界。このままでは夢はおろか、自分も刑務所行き。そこで彼女はファオクと同じく認知症を患っている自分の母親を身代わりにするのですが……。本当に『パラサイト 半地下の家族』が生っちょろく見えてしまうドン底映画。今年見たアジア映画では私的暫定1位です。 独特のウェットな質感、出てくるキャラクター全員が問題を抱えている、俳優の芝居のうまさ……韓国映画のおいしいところを全部つめこんでいるんですよ。とにかく脚本が練りに練られていて素晴らしく、全く無駄なエピソードがない。詳しいことはネタバレになってしまうので避けますが、たとえば目の不自由なテガンには別の才能があったり……。 いや、これは観た人同士で分かち合いたくなるはず。むしろ観てしまったら、友だちに「『ビニールハウス』観た!?」ってすぐに確認したくなるほど。怖さはあるけどホラーテイストはゼロのサスペンスなので、恐怖映画が苦手な人でも絶対に気に入るはず。 ラストなんて本当にびっくりで、私は腰が抜けました。それも最高に気持ちがいい腰の抜け方。いちはやく、劇場でご覧ください。