【LiLiCoのこの映画、埋もらさせちゃダメ!】今年見たアジア映画では私的暫定一位です『ビニールハウス』
仲間と映画館に行って、さまざまな"仮エンディング"を作ると大盛り上がりすると思いますよ
そして4月5日公開になる『パスト ライブス/再会』もご紹介します。今年のアカデミー賞で脚本賞にノミネートされた、24年間に渡るラブロマンスです。 韓国ソウルで12歳まで一緒に過ごした幼馴染のノラとヘソン。ノラが北米に移住したことをきっかけに疎遠になり12年、24歳になった彼らはSNSを通じて再会を果たします。お互いにちょっとした懐かしさと少年少女時代の恋心を思い出しつつも、またすれ違い。 その12年後、36歳になったノラはアーサーと結婚して、互いを尊重し合う夫婦になっていました。ところが、ヘソンはそれを知りながらも、ノラに会うためにニューヨークへ。24年の歳月を経て再会を果たしたふたりはどうなるのか!? というお話。 冒頭のシーンは、とても意味深です。バーにいるあの3人はどんな関係か……っていうちょっぴりミステリーな感じもあるスタート。私個人的にそういうのを見るのも好きなんですよね。あの空間だと色気も感じます。 小学校くらいの頃、友だち以上恋人未満な仲良しの人っていると思うんですよ。たまに思い出すような人、絶対いるでしょ? そう考えると、この物語は共感しやすいはず。生まれて出会った場所は一緒だけど、多感な思春期以降を過ごした場所がアジアと北米で全く違うカルチャーになってしまう。これは、きっと日本の人でも身に覚えがある人がいるんじゃないかな。 それに、時間の流れが本当にリアル。だって、24年もあったら、子どもの頃のままじゃないし、なんならノラのように結婚してることだって当たり前ですからね。また、ノラの描写は今の時代を映してますよね。女性が海外でなにかを成し遂げたいって気持ちがガンガン感じられるキャラクターってところもポイントです。 あと現代劇なので、疎遠な幼馴染だってネットですぐに見つかるってところもリアル。テレビ電話で会話するシーンは、会話の前と後でちょっとひとりで笑顔になっちゃったりして。その気持ち分かる~! だって、会えないときが一番わくわくして楽しいんだもん。その気持ちをノラがアーサーに話しちゃうのも、自分の気持ちを落ち着かせるためにやってる“あるある”な話で共感しちゃいました。 やんわりした三角関係の映画はこれまでもたくさんありましたが、だいたいグッと感情を押し殺す役がいますよね。それがこの作品ではアーサーにあたるんですが、彼が全然そういうキャラじゃないのが物語を面白くするんです。彼は“俺は邪魔な白人”と言っちゃうんですが、それによってこのふたりの行方が分からなくなっちゃう。あのとき“好き”と言っていたら? 何かを後悔する辛さ。内向的な方は考えさせられるかも。 これを観た人はみんな結末について考えると思うんですよ。この結末でよかったのか、それともどうなったらよかったのか。これは仲間と映画館に行って、さまざまな“仮エンディング”を作ると大盛り上がりすると思いますよ。 (C)2022 KOREAN FILM COUNCIL. ALL RIGHTS RESERVED 2022 (C) Twenty Years Rights LLC. All Rights Reserved 取材・文:よしひろまさみち 撮影:源賀津己 『ビニールハウス』 上映中 『パスト ライブス/再会』 4月5日(金)公開 ■LiLiCoプロフィール 1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。