米国むしばむフェンタニル禍、大統領選重要争点に-激戦州で高い関心
(ブルームバーグ): 2024年の米大統領選を理解するには、医療用麻薬「フェンタニル」を巡る問題を理解することが不可欠だ。
合成オピオイドの一種、フェンタニルの過剰摂取による死亡は何年も前から社会問題となっており、米国民の心に傷を残している。かつては病院の外で使われることはほとんどなかったフェンタニルだが、犯罪組織によって今や簡単に手に入るストリートドラッグとなった。中国で製造される安価な化学薬品を原料とし、米国内にはメキシコ経由で持ち込まれることが多い。他の違法薬物に混合されることが多く、それを知らずに使った場合には命を落とす危険もある。
世論調査では、フェンタニル禍に終止符を打つことが優先課題だと示されている。
ブルームバーグ・ニュースとモーニング・コンサルトが登録有権者約5000人を対象に最近実施した調査では、11月選挙での争点としてフェンタニル誤用問題が「非常に重要」もしくは「ある程度重要」と答えた人の割合は、激戦州7州では80%に上った。人工妊娠中絶、気候変動、労使問題、ウクライナやガザでの戦争を重要争点と考える人の数を上回っている。
米国疾病予防管理センター(CDC)が発表した最新の暫定データによると、2019年11月から2023年10月の期間では約27万人が合成オピオイドによる過剰摂取で死亡した。麻薬性鎮痛薬の過剰摂取が原因の死亡は年間約8万人に増えているが、その多くをフェンタニルなどの合成オピオイドが占める。
フェンタニル危機はケーブルテレビのニュースでも取り上げられるようになり、連邦議会では多くの法案が提出され、全米各地の州議会から教育委員会に至るまでが解決のための行動をスローガンに掲げるようになっている。治療の選択肢を増やすことから麻薬カルテルとの戦いなど多くの意見が持ち上がっているが、フェンタニル危機を打破したいというのは有権者の一致した思いのようだ。
11月の大統領選本選に向け、民主党バイデン大統領も共和党トランプ前大統領も、自身への支持を固めるため、そして離れた支持を取り戻すため、この問題に力を入れている。両者にとってフェンタニル危機は、移民や国境警備、中国や犯罪まであらゆることについて話す題材でもある。