現在開催中のSSFFで“味のなくならないガム”みたいな短編映画を見つけた!『Digging Woman 掘る女』
【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】
ほぼ、モノローグで構成されるストーリー。一見、平凡そうな女性が抱えている秘密。それは「人に隠れて、穴を掘ること」。3分半程度の短い映画なので、それ以外のことは一切、描かれません。 これが凄くいい。 詩的というか、具体的にはワーズワースの様な印象を受けました。 最近は、映画のテレビドラマ化が進んでいて、一番の問題は「説明が多い」なんですよね。 テレビは、途中から観る人に向けて、説明をところどころ挟むのがセオリーなんですが、映画や舞台は「劇場に閉じ込めて最初から最後まで、強引に観せる」媒体だから、作り方が違うのですが、最近はテレビドラマの映画化が流行っていて、この境界が曖昧になっている気がします。 エンタメ、いや、あらゆる産業が「1日24時間しかない人間の、時間とお金の奪い合い」という、側面を持っていると思うのですが、この映画は「たった3分半で…一晩語り合える質量」を持っていました。 「なんで掘っていたのか」「何を掘っていたのか」という推理をするのも楽しいし、「何を掘っていたら面白いか」というアイデア出しでも、「過去にどんな経験をして、掘り始めることに至ったのか」という空想でもずっと楽しめる。できるだけ監督を始めとする関係者には、設定を秘密にしておいて頂きたい。 “ショートショート”の良さを、存分に味わえる傑作でした。8回ぐらい観ちゃった。 つまんなかったらすぐ忘れちゃうけど、こんなに後ろ髪を引かれる作品は久し振りでした。 こういう「ザ・短編映画」から「ミュージックビデオ」「ドキュメンタリー」「アニメーション」「エクスペリメンタル(実験的な作品という意味)」などなど、“今の映画界”を短い時間で多くの本数を体験できる「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2024」是非、ご参加下さい!
黒田勇樹(くろだ・ゆうき) 1982年、東京都生まれ。幼少時より俳優として舞台やドラマ、映画、CMなどで活躍。 主な出演ドラマ作品に『人間・失格 たとえば僕が死んだら』『セカンド・チャンス』(ともにTBS)、『ひとつ屋根の下2』(フジテレビ)など。山田洋次監督映画『学校III』にて日本アカデミー賞新人男優賞やキネマ旬報新人男優賞などを受賞。2010年5月をもって俳優業を引退し、「ハイパーメディアフリーター」と名乗り、ネットを中心に活動を始めるが2014年に「俳優復帰」を宣言し、小劇場を中心に精力的に活動を再開。 2016年に監督映画「恐怖!セミ男」がゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて上映。 現在は、映画やドラマ監督、舞台の脚本演出など幅広く活動中。