国は「建て替え」と言うが地元にとっては「増設」…原発回帰が鮮明の次期エネルギー計画原案に立地自治体は違和感
九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の増設を可能にする政策の道筋が描かれた。原発回帰を鮮明にした国の次期エネルギー基本計画原案が示す建設の方向性は、九電の置かれた状況とほぼ合致するからだ。県が3号機増設を凍結して12年余り。計画に進展はない半面、再稼働をはじめ全国の現場で川内原発は“トップランナー”でいる。福島第1原発事故後、初の新規建設先ともなるのか。 【写真】川内原発増設計画を巡る主な動きをまとめた経過表
「議論が包括的に反映されている。賛同したい」「実効性をいかに高めるか」-。17日、経済産業省の有識者会議。次期計画を討議してきたメンバーは、事務局の経産省が作成した原案に満足げだった。 原発関連では福島事故後に記してきた「依存度を低減する」を削除。廃炉を決めた原発を持つ電力会社には、地元の理解を前提に別の自社原発で次世代革新炉への「建て替え」を認め、具体化を進める方針だ。 2040年度の電源構成は原発が現在の倍以上となる2割程度をにらむ。有識者会議で資源エネルギー庁幹部は目標達成に向けた展開を説明した。「全く計画がないところから新しく建てると間に合わない。既に計画があったものもある」 ■□■ 川内原発3号機の計画を持つ九電は、原案の「建て替え」方針に親和性の高い電力会社といえる。 玄海原発(佐賀県)では1、2号機の廃炉作業を進めている。他方、川内原発には3号機の予定地が既にある。電力供給に欠かせない送電線設備は強み。半導体工場などの進出で九州の電力需要増加が見込まれる追い風も吹く。
加えて、川内原発は福島事故後の新規制基準下で、原発活用の先陣を切ってきた経緯がある。1号機は15年8月に全国初の再稼働を果たし、24年7月の運転延長入りは再稼働した後に迎えた初のケースだった。 九電の池辺和弘社長は新設の必要性を訴える一人。だが、それ以上は多くを語らない。原案公表の翌18日、訪問先の薩摩川内市で報道陣に問われて「個別地点の建設・開発はまだ先の議論」「今のところ3号機は凍結の位置付け」と述べるにとどめた。 ■□■ 従来の計画は1、2号機の改良型で、国が今回示したのは開発中の次世代型という違いはある。ただし、原案のいう「建て替え」は、川内原発に造るなら地元にとっては増設以外の何ものでもない。 そもそも、従来の計画は03年に須賀龍郎知事(当時)が環境調査を「増設とは別」と受け入れて本格化。10年、次の伊藤祐一郎知事(同)が増設に同意するまでの期間に限っても県民の間に賛否が巻き起こった。
現在の塩田康一知事は、伊藤氏が12年に計画凍結したのを踏襲している。川内原発への「建て替え」には難色を示し、「同じ県内にある原発同士の話ならまだしも、玄海と川内では遠い」と違和感を口にする。 とはいえ、中央では新設を前提にした動きが加速しているのも事実。原発設置の許可権を握る原子力規制委員会は、九電も開発に加わる一部次世代炉を題材に、規制上の論点洗い出し作業を始めている。山中伸介委員長は18日の会見で「対応すべきところは対応して、申請があれば審査に臨む」と述べた。
南日本新聞 | 鹿児島