【独自】TSMC熊本工場の内部へ②“超純水”作り出す 地下に広大な水処理システム
世界最大手の半導体受託製造企業、台湾TSMC。機密保持の観点から徹底した情報管理が行われ、ベールに包まれています。熊本県菊陽町に完成した日本国内第1号となる工場に熊本朝日放送のカメラが入りました。
サッカーコート4面分 地下に水処理システム
地上4階建ての熊本第1工場。地上は主にクリーンルーム、地下に水処理施設があります。熊本工場を運営するJASM水処理課の山本淳二さんの案内で向かったのは、地下2階。約2万5000㎡、サッカーコート4面分が、水処理のシステムだといいます。
ウエハーの洗浄など大量の水が必要となる半導体の製造。11月の地下水くみ上げ量は1日平均4800t。フル稼働すると8500tほどになる見込みです。工場のシステムは、8つのくみ上げ井戸の水位を常に監視し、一定値を下回るとポンプが自動停止する仕組み。過剰なくみ上げができないよう管理しています。
地下水そのまま使えない…シビアな半導体の世界
実は、くみ上げた地下水は、そのまま使うことはできません。 水にレーザー光を当てると一目瞭然。不純物が大量に含まれている水道水は、光の筋がはっきりと見えますが、処理を施した純水は光が見えにくくなります。 半導体はナノレベルのゴミの付着も許さないシビアな世界。山本さんは「ウエハーの回路の幅は、ナノメートル単位で競っている。水の中に不純物やイオンが含まれていると、回路の間に入り込んで製品に異常が出てしまう。だから何にも入ってない“超純水”で洗浄しないと製品に影響が出てしまう」と説明します。
熊本工場では、ろ過装置などを使い①濁質などを取り除く前処理②炭素系物質などを取り除く中段処理③仕上げの工程である精錬処理の3工程を経て、地下水を超純水にしています。 処理された水は、50mプールに耳かき1さじ分程度の不純物しか混入を許さない、極めて純度の高い水です。 こうした水を作り出すには、量や質に恵まれた熊本の地下水が必要なのか― 山本さんは「原水が地下水であるかダムの水であるかは重要ではない」といいます。なぜなら、地下水に含まれるシリカなどは、ダムの水に含まれる全有機炭素と同様、半導体の世界では不純物。ということは、熊本県が示している竜門ダムの未利用水を半導体工場の工業用水とする案も、技術的には可能だということです。