増税への怒りが爆発して政府転覆も――私たちはなぜ税金を納めなければならないのか?
市民革命や独立戦争の導火線となった租税問題
租税の問題は、私たちにもおなじみの歴史上の大変動とふかく係わっている。たとえば1789~99年のフランス革命。この革命は、戦費の膨張と王室による浪費で財政危機に陥ったルイ王朝が、堪えかねて三つの身分代表からなる「三部会」を招集し、課税に対する同意をえようとしたところ、第三身分の反乱が起きたことが契機となった。
あるいは、1775年に始まったアメリカ独立戦争。この戦争のきっかけとなったのは、その2年前のボストン茶会事件だった。そもそもこの茶会事件は、イギリス本国政府が植民地における茶の独占販売権を東インド会社に与えようとしたことに対するボストン市民の不満とともに、イギリスが北米大陸の植民地獲得をめぐってフランスと争った7年戦争の戦費を、アメリカ市民にも負担させるべく導入した茶税をはじめとする諸税への反発として始まったものである。 租税問題は市民革命や独立戦争の導火線となり、近代国家を成立させる触媒の役割を果たしたのである。さらに革命の結果として、市民社会は国家に対して自分たちの同意なしに課税しないという「租税協賛権」を認めさせたばかりか、それまでは王が課税を行いたいと考えたときに一方的かつ臨時的に議会を招集していたのに対し、恒久的かつ定期的な議会開催をも認めさせた。近代的な議会制度が成立するきっかけを提供したのもまた、租税問題だったのである。 このように、「租税」という視点から振り返ると、欧米の近代史のありようが従来とは違った姿で鮮明に浮かび上がってくる。それはまた、現代日本の社会のあり方にも直結しているとさえ言える。 ※本記事は、諸富徹『私たちはなぜ税金を納めるのか 租税の経済思想史』(新潮選書)を再構成して作成したものです。
デイリー新潮編集部
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