<北朝鮮内部>農村出身の都市住民を強制帰農の残酷 没収した個人の不法畑の耕作を担当させる
◆個人の耕作を徹底取り締まり
北朝鮮当局が農繁期を迎えて、都市に住む農村出身者を強制的に帰農させようとしていることが分かった。個人が不法に耕作していた畑の没収が進められており、協同農場で耕作する人員を確保することが目的だ。一方で当局は、今年も農作業の重要性を強調して農村総動員令を発して住民たちを急き立てている。2~3月に咸鏡北道(ハムギョンプクド)の取材協力者が伝えてきた。(チョン·ソンジュン / カン·ジウォン) 【北朝鮮写真特集】 最下層に貶められた農村女性たちの姿撮った(9枚)
◆個人が耕す畑を没収し農場へ移転
ごく一部の国家認定私有地を除き、北朝鮮の土地は原則的には国家所有であり、農業活動のほとんどは協同農場で行われている。しかし、1990年代以降、配給制度がほぼ崩壊し、農民と農村付近の住民たちが、山の傾斜地や石だらけの畑などを開墾して不法に耕す、いわゆる「小土地」と呼ばれる不法耕作地が全国に出現した。
この数年間、当局は「小土地」をはじめとする不法営農地に対する取り締まりを強化してきたが、今年はあらためて大がかりな「小土地」調査に乗り出した。取材協力者が調べたのはA農場。咸鏡北道では中間規模で、農場員数は約500人だ。 個人の不法営農地に対する今回の調査は、道農村経理委員会が主管し国土監督隊が協力して進めているという。 ※道農村経理委員会:道内の協同農場の営農地を総合的に監督、統制する行政機関 ※国土監督隊:山や河川、水産など国家の自然と資源を保護、監督する機関 「周辺の『小土地』を全数調査し、農場に帰属させて作物を植えるか、それとも山林を造成するかを決めるという方針です。(農場に)帰属させない土地でも、少なくとも1~2年は背の低い作物(大豆や唐辛子など)を植えさせると言っている」 没収した畑に植林するにしても、木が大きくなるまでは最大限、耕作地として活用しようという意図だと見られる。
◆ 没収した畑を耕作させるため「農村離脱者」を帰農させる
また、当局は新たに農場に帰属させた土地で営農させるため、「農村縁故者」=農村離脱者を調査して、農村に帰農させる作業を始めたという。 北朝鮮では、協同農場の人員を確保するため、農村からの人の流出を厳しく統制してきた。農民身分に生まれた人々は、本人と子どもから子々孫々に至るまで、農村を離れることができない制度になっている。事実上の現代版の身分制である。 だが、農村の遅れた環境に加え、農民は北朝鮮でもっとも貧しい最下層の暮らしを強いられてきたため、農民にとっては、何とか農村を抜け出すことが夢なのである。そのためには、軍に入隊して将校になったり、女性の場合は都市に嫁いだりする方法がある。 しかし、農村を離れて都市住民になったからといって安心することはできない。彼らには一生「農村縁故者」というレッテルが貼られているためだ。当局で、このような人々を捜し出して、再び農村に送る作業が始まったということわけだ。 「ひとつの農場に、普通2~3の分組が追加で作られるそうです。(地方政府の)労働課で農村に縁故のある人を探し出し、(強制的に)帰農させているそうです」 ※「分組」とは、協同農場で農業をする最小単位をいう。10名程度で構成される。