<インド・炭鉱>仕事を失う労働者 ── 高橋邦典フォト・ジャーナル
乾燥した原野のただ中に建てられたアパートの共同水場は、洗濯や食器洗いをする住人たちで賑わっていた。地盤沈下の危険に晒された人々のための避難先としてつくられたこの場所に、最初のグループが入居したのが8年ほど前。その後増築が続き、拡大したアパート群は、今ではちょっとした町のようになった。
「水も電気もあるし、住まいには文句はないけど、ここには仕事が無い」 軒下に腰を下ろしていた日雇い労働者のアジェイが言った。4年前に、住んでいた地区に沈下の危険があるというのでここに移住させられた。一緒に来た人々の多くは、彼と同じ日雇い労働者だ。町に住んでいるときはほぼ毎日働いていたが、こんな過疎地には何もない。町にでるために朝4時に家をでるが、それでも仕事にあぶれることもある。 「わざわざ力車代と時間をかけて町にでても、赤字になっちまうんだ」 (2014年12月) ---------------- 高橋邦典 フォトジャーナリスト 宮城県仙台市生まれ。1990年に渡米。米新聞社でフォトグラファーとして勤務後、2009年よりフリーランスとしてインドに拠点を移す。アフガニスタン、イラク、リベリア、リビアなどの紛争地を取材。著書に「ぼくの見た戦争_2003年イラク」、「『あの日』のこと」(いずれもポプラ社)、「フレームズ・オブ・ライフ」(長崎出版)などがある。ワールド・プレス・フォト、POYiをはじめとして、受賞多数。 Copyright (C) Kuni Takahashi. All Rights Reserved.