ヨハネス・イッテンの名言「色は生命である。」【本と名言365】
これまでになかった手法で新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。色彩学の大家にして、初期バウハウスに大きな影響を与えた美術教育者、ヨハネス・イッテン。今日では色彩を扱ううえでの基礎になっている数々の理論を提唱したイッテンは、誰よりも実直に色と向き合い、一生をかけて色彩が持つ限りない力を伝えることに邁進した。 【フォトギャラリーを見る】 色は生命である。 この世界は色でできている。みずみずしい瑠璃色を湛えた海、しんしんと降り積もる純白の雪、飲み込まれるような漆黒の闇……。はるか昔から人は色が持つ魔力を認め、さまざまな色で感情や情景を表現してきた。では「美しい色彩」とは一体どのような条件で生まれるのか。色彩を学問として扱い、色の特性や配色を法則を体系化した人物こそ、画家であり、バウハウスでカリスマ教育者として活躍したヨハネス・イッテンだった。色彩が生み出すエネルギーについて、彼は著書『色彩論』のなかでこのように表現している。 「色は生命である。……色は光の子供であり、光は色の母親である。宇宙の最初の現象である光は、色を通じて、宇宙の心といきいきとした魂の存在をわれわれに明示する。天にかかった巨大な色のコロナの超自然的な現象ほど、ドラマチックに人の心をゆり動かすものはない」 科学的な理論だけでなく精神論も重んじたイッテンは、合理性や機能性を追求したバウハウスのなかでいわば異端児。事実、方針のすれ違いからイッテンはバウハウスを4年で去ることになる。それでもなお、「デザインの法則の知識に拘束される必要はない。その知識は各人をまよいや、優柔不断な態度から解放するものなのだ」と独自の姿勢を貫き通し、バウハウス脱退後も美術教育者としての生涯を全うしたイッテン。その集大成でもある大著『色彩論』は、時代を超えた今でも多くのデザイナーや芸術を学ぶ人々に、色彩を知る楽しさや学びを与え続けている。
ヨハネス・イッテン
1888年、スイス生まれ。美術教育者、画家。幼い頃から色彩に興味を持ち、1913年に渡独して当時一流の色彩理論家だったアドルフ・ヘルツェルに師事。その後、ウィーンに移住し、数年間自身の学校を経営する。1919年に教え子を引き連れ、バウハウスに参加。色彩と造形に関する予備教育を担当する。バウハウスを脱退後、ベルリンで美術学校「イッテン・シューレ」を開校。それまでの教育内容を『色彩論』としてまとめ上げる。1967年、78歳で逝去。
photo_Yuki Sonoyama text_Kentaro Wada illustration_Yoshifumi ...