踊らない!? 大捜査線!『室井慎次 敗れざる者』傑作シリーズの続編は、ここが凄かった!
【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】
踊らないんですよ!「踊る~」シリーズの見せ場と言えば、バンバン人間模様が交差していって、大事件が起きて、青島が叫んで、BGMもじゃんじゃん鳴らす。それを観たくてみているフシがあるじゃないですか。 【写真】柳葉敏郎「父親の気持ちでいた」若手俳優と双子子役にメロメロ でも、12年ぶりに再始動した今作は、みんな大好き室井さんを主役に添え、引退後、故郷である秋田を舞台に、夜空とか川とか畑、自然を映していくゆったりとした映像が、ふんだんに使われています。 都会を舞台にして、ビルとか、地下の駐車場で人が刺されたり、爆発したり、踊るのお家芸とも言える展開、秋田ではそういう事が起こりません。この、演出の舵の切り方は、本当に美しかったと思います。 更に、テーマが「家族」。孤独に戦ってきた室井さんの、葛藤がしっかりと丁寧に描かれていきます。 それでいて、過去作や映画、スピンオフなどのキャラクターや「残り香」が、散りばめられていて、全然物足りなくない。 BSフジでやっていた『警視庁捜査資料管理室 (仮)』赤ペン瀧川さん演じる明石幸男まで、出てくる! 個人的に感動したのは、過去作の映像が、沢山出てくるのですが、アスペクト比。映像の縦横の比率のこととでも言いましょうか。 初期の頃の映像は4:3、後期のテレビの画面が横長になっていった16:9の映像が入り混じっていて、30年近く追いかけてきたファンとしては、歴史を感じて涙が止まりませんでした。 11月には『室井慎次 生き続ける者』という後編もあるそうで、こちらは「王道の“踊る”」を、やるんじゃないかと筆者は予想しています。 めっちゃ楽しみ! ワクワクする時間は長いほうがいいので、今のうちに観ておくことをお勧めします!
黒田勇樹(くろだ・ゆうき) 1982年、東京都生まれ。幼少時より俳優として舞台やドラマ、映画、CMなどで活躍。 主な出演ドラマ作品に『人間・失格 たとえば僕が死んだら』『セカンド・チャンス』(ともにTBS)、『ひとつ屋根の下2』(フジテレビ)など。山田洋次監督映画『学校III』にて日本アカデミー賞新人男優賞やキネマ旬報新人男優賞などを受賞。2010年5月をもって俳優業を引退し、「ハイパーメディアフリーター」と名乗り、ネットを中心に活動を始めるが2014年に「俳優復帰」を宣言し、小劇場を中心に精力的に活動を再開。 2016年に監督映画「恐怖!セミ男」がゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて上映。 現在は、映画やドラマ監督、舞台の脚本演出など幅広く活動中。