新興国を含む全世界の株式1万銘柄以上に超分散、ゆうちょ銀行が「全世界超分散株式ファンド」取り扱い開始
新ファンドと同じ運用戦略で運用する類似ファンドは2011年9月からの運用実績があり、2024年2月末までに円換算ベースで100の基準価額が558へと約12年半で5.56倍になっている。直近のパフォーマンスをたとえば、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」との年間パフォーマンスを比較すると、勝った年と負けた年があり、5年程度の運用成績では優劣を見分けることは難しい。実質的な評価としては、より幅広く分散投資し、かつ、小型・バリュー・高収益にフォーカスしたことによる市場をアウトパフォームする期待と、運用コストの差(新ファンドの年0.99633%とオルカンの年0.05775%)を比較して評価することになりそうだが、現実的には銀行の窓口でも購入できる商品とオンライン販売専用ファンドは同じ土俵には乗らない。銀行窓口で販売される商品でも「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」に匹敵する魅力を備えた商品が現れたということだろう。
全世界株式(オール・カントリー)というカテゴリーは、最大人気の「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の信託報酬率が年0.05775%(税込み)という株式公募ファンドとしては、業界で最低水準になっている。コスト競争でより低い水準を競っても、実質的な運用成績にどれほどの影響があるか計測するのが難しい水準になってしまっている。これを上回る魅力は、アクティブファンドとして、いかに安定的にインデックスをアウトパフォームする実績を示すかということになるが、現実問題としてはアクティブファンドでやや高いコストを負担しながら長期にわたってインデックスファンドをアウトパフォームし続けるのはかなり難しいということが過去の実績では示されている。ただ、「全世界超分散株式ファンド」は、アクティブファンドの中でも「システマティック運用」を活用することによって、約1万3000銘柄という人間が一つひとつ内容を確認していくことが不可能なくらいに多くの銘柄を組み入れ可能とする魅力を提供することに成功している。同じカテゴリーで同じようなコンセプトの下で運用を行うファンドの中にも、工夫次第で異なる価値を提供することができる。投資家のニーズをきめ細かく汲み上げる努力が続くことが重要だ。(イメージ写真提供:123RF)
ウエルスアドバイザー