「リアルタイム×AI×ローコード」で何ができるか--米ベンチャーの新技術から探る
「リアルタイムマネジメント」に適用できないか --AIはVANTIQ独自のものか。 VANTIQ自体がAI機能を独自に保持しているのではなく、目的を達成するために一番精度の高いAIを組み入れることができる。また、将来的に別なAIに入れ替えることも可能だ(図2)。 --改めて、VANTIQの技術の最大のポイントは何か。 従来、変化する気象や生体情報をリアルタイムで状況の変化に応じて何らかの判断を組み入れることは、今までのコンピュータの常識では不可能だった。なぜならば、通常のコンピュータ処理では、その結果をストレージに記録しなくてはならず、生体や気象のデータをストレージに記録した瞬間に過去のデータとなってしまうからだ。生体や気象のデータはその後も変化を続けるだけに大きなジレンマがあった。 これに対し、VANTIQの技術を社会基盤として活用することで、今までにできなかったさまざまなイノベーションを起こすことができると確信している。 --VANTIQの技術だからこそ実現できる分かりやすい利用事例を聞かせてほしい。 例えば、地震による災害が起きた時、どこに避難すべきか一人一人の異なる状況を判断して指示を行う際、地震がどこで起きているのか、それによって発生する津波がどこからどの方向にどれくらいの大きさでやってくるのか。また、津波が来る方向のどこに何人が住んでいるのか、それぞれ誰なのか、その人たちは避難をすべきなのか、しなくていいのか。避難する場合、どの方向に避難しなければならないのか。そういったことを判断する場合、地震の動きのリアルタイムな情報、津波が発生して押し寄せてくる方向と大きさをリアルタイムで検知し、影響を受ける方向にリアルタイムで動いている可能性のある人たちがいれば、どこにいる人はどちらの方向に避難すべきか、もしくはしなくていいのか、といった多数の変化する情報を瞬時に捉えて、その瞬間ごとでの変化に応じて、AIを駆使しながら個人ごとに最も安全な指示を出すことは、今までの技術では不可能だった。それを可能にするのが、VANTIQ だ。 以上が、メールによるインタビューの内容である。 なお、佐藤氏によると、日本での活用領域については、図3に示す6つの分野に対して重点的に展開していく構えだ。 最後に、VANTIQの技術について、筆者からも応用面で一言述べておきたい。それは、この技術は企業経営の「リアルタイムマネジメント」化にも役立つのではないかということだ。例えば、経費管理。ワークフローとスケジューラーをフロントエンドにした仕組みによって、申請・承認・決裁といった業務の流れをつかさどるワークフローと、従業員の動き(移動)が分かるスケジューラーを連動させ、さらにAIによるチェック機能を持たせれば、まさしくリアルタイムで不正を許さない経費管理ができるようになるはずだ。 リアルタイムマネジメントは、筆者もこれまで幾つかの企業のチャレンジを取材してきた、経営の理想の姿だ。これまでのリアルタイム処理の技術に加え、生成AI、さらにはAIエージェントを駆使できるVANTIQの技術を適用すれば、経営そのものにも活用領域が大きく広がるのではないか。今後の動きに注目したい。