「メルカリ ハロ」はなぜ好調? 利用者が増えている、納得の理由
既存事業との相乗効果
スポットワークの特徴として、仕事が終わればすぐに給与を受け取れることが挙げられる。ユーザーはプラットフォーム側から給与を受け取り、企業はプラットフォーム側へ後日支払う仕組みだ。ここで、メルカリ ハロならではの顧客体験が生まれる。 仕事で得た給与はモノを買ったり、家賃にあてたり、飲食などに使われることが多い。一方、メルカリの場合、メルペイやメルカードといったフィンテック事業と、買い物ができるマーケットプレイスの両軸がある。 つまり、メルカリ上でスキルや時間を提供し、対価を得る。得た対価をまたメルカリのサービス内で利用できるというわけだ。まさに同社のミッションでもある「価値の循環」といえる。 求人サービスを使う場合、一般的に「仕事を探す」タイミングで使う人が多い。使用頻度が限られるので、アプリを探すのに手間取ったり、アカウント情報を忘れてログインできなかったりすれば、「使い勝手が悪いな」「ちょっと面倒だな」と感じたことがある人もいるはず。 一方、メルカリを日常的に使用していれば、常時ログインしたままなので、急に時間が空いたタイミングでそのままメルカリ ハロを使うシーンが生まれやすい。「こういった流れは他社が真似しようと思っても、すぐにはできないのでは」と自信をのぞかせる。 同社は新たな機能を追加していく予定で、その中のひとつに「デジタル給与」がある。資金移動業者(銀行以外で送金サービスを提供する登録事業者)としてメルカリが厚生労働省から認定されると、金融機関を介さず、アプリ上で給与をそのまま受け取れるようになる。 資金移動業者として認定されるタイミングはいつになるのかは分からないが、実現すればメルペイや暗号資産との取引ができるメルコインとも親和性が高くなるはずだ。
スポットワークが雇用の「入り口」に
スポットワークは、これからの働き方にどのような影響を与えるのか。求人を見て面接し、働くという従来の流れでなく、まずスポットワークで体験してから長期間働くかどうか決めるというカタチに変わるかもしれない。履歴書と面接だけで求職者の人となりを理解する必要があった企業側にもメリットがある。 スポットワークが拡大すれば、単発・短時間のアルバイトが増えるだけでなく、仕事の探し方や働き方の選択肢が広がるのではないか。企業にとっても、雇用できる人の対象が増えるほか、リピーターや長期就業に切り替える人と出会える機会も多くなるかもしれない。 法律面など解決しなければならない課題はあるものの、スポットワークは仕事の探し方、働き方を大きく変えていく可能性を秘めている。同社のミッションを体現するサービスとして展開するメルカリ ハロが、今後のスポットワーク業界でどのようにポジションを獲得していくのか、引き続き注視したい。 (カワブチカズキ)
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