上田誠仁コラム雲外蒼天/第44回「習ったなら実践を繰り返し慣れろ」
山梨学大の上田誠仁顧問による特別連載コラム。これまでの経験や感じたこと、想いなど、心のままに綴っていただきます! ********************** 4月を振り返ると、前半は水彩画の技法のように、薄く水で溶いた黄緑色が野山に少し潤いを与えたように彩られていた。そう思う間もなく後半には濃い緑が新緑の勢いを誇示する風景となってきた。 【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第43回「春風を以て人に接し、秋霜を以て自らを慎む」 春爛漫と言いたいところではあるが、花粉症と黄砂に悩まされた日々でもあった。眼のかゆみ・くしゃみ・鼻水・鼻詰まりは、なかなかしんどいものである。コロナ禍でマスク着用が日常であったことを顧みれば、点眼薬に助けられつつも耐えようがある。 4月は年度の始めということもあり新生活がスタートする。会社では入社式、学校ならば入学式や始業式が執り行われる。生活環境や生活様式、規則や規律、風土・風習などの違いは戸惑う日々となったことだろう。不慣れを受け入れ、それを理解してゆくにはそれぞれの時間軸に違いが生じるものだ。 「習うより慣れよ」としばしば言われるが、言ってはみるものの慣れるには時間が必要と承知している。慣れないうちにしでかしたミスは、後の教訓となり生きる財産となることが多い。この年になって振り返るとつくづく実感される。 学校スポーツの現場では、さながら「習いながら慣れよ」といった実践が施されてゆく。コーチングは常に、放任を自主性重視と言い換えたり、改革改善の余地がある行動規範を伝統といいつつ、そのタイミングを失ってしまうことの無いように取り組まなければならないからだ。 “習う=学ぶ”と捉えれば、学ぶ意欲や楽しさを享受できる環境や指導法に一工夫凝らす努力が必要となってくる。 「やって見せ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば人は動かじ」の言葉がある。コーチングの基本に立ち返れば『やって見せ(手本・見本を示す)、言って聞かせて(理論や根拠を教える)、させてみて(実践と継続)、褒めて(経過観察による評価・称賛)人を動かす(モチベーションセオリー)』のように多岐にわたる配慮が必要となってくる。そのうえでさらに踏み込めば、「習ったなら実践を繰り返し慣れろ」と言いたくもなる。 マニュアルは知っているが、頭でっかちとなって実戦で役立たないようでは競技者としての成長が望めないからだ。 最初は「知らない・できない・わからない」で当然。失敗と下手、追いつかない・届かないことが当たり前からのスタートだ。選手は常に知らないことを知ろうとする学習意欲を保ち、できないことができるようになるための継続をあきらめず、わからないことの真意を探求し理解する勤勉さを持つべきともいえる。 このような思いで選手と指導者がグラウンドに立つ時に相互の思いが結ばれ、それがチームに反映されるならば集団の熱量となって結果につながると信じてきた。