異例のアメリカ大統領選挙 多くの裁判を抱え選挙に臨むトランプ氏――今日は“何の”裁判?
11月のアメリカ大統領選挙で返り咲きを狙うトランプ前大統領。4つの刑事裁判以外にも多くの裁判を抱えている。選挙の行方に大きな影響を与える“トランプ裁判”をまとめた。 【動くグラフ】米大統領選挙2024 バイデンVSトランプ・支持率の推移
■“トランプ裁判”が選挙に影響
アメリカ大統領選挙で返り咲きを狙うトランプ氏。大統領経験者として初めて起訴され、4つの事件、88の罪に問われている。 裁判と選挙選が並行して進む異例の展開となっているが、実はトランプ氏の抱える裁判は4つの刑事裁判だけではない。他にも裁判を抱えているため、報道される“トランプ裁判”を見て混乱する方も多いだろう。 選挙戦に大きな影響を与える“トランプ裁判”をまとめてみよう。
■【最高裁】大統領時代の行為は免責されるのか?
トランプ氏は、2020年の大統領選での敗北を覆そうとして起訴された事件をめぐり、大統領在任中の行為は刑事責任が免責されると主張している。連邦最高裁判所は7月1日、大統領の公的な行為は免責されるとする一方、私的な行為は免責されないとする判断を示した。この事件をめぐるトランプ氏の行為が公的か私的かを判断するよう、審理は地裁に差し戻された。これを受け、11月の大統領選の前には、初公判が開かれない可能性が高くなり、返り咲きを狙うトランプ氏にとって追い風となる。
■4つの「刑事裁判」
トランプ氏は4つの刑事裁判を抱えている。全ての裁判で「バイデン政権の政治的迫害だ。選挙妨害だ」などと訴え、無罪を主張している。 ◆【刑事裁判(1)】不倫口止め料支払いで業務記録改ざん 2016年の大統領選の前に、過去の不倫関係を主張するポルノ女優に支払った口止め料13万ドルについて、隠ぺいするために業務記録を改ざんした罪に問われていて、5月末に34の罪全てで有罪評決を受けた。 量刑は7月11日に言い渡される予定だったが、連邦最高裁が7月1日、大統領在任中の公務は「免責特権」が適用され、刑事責任を問われないという判断を示したことを受け、量刑の言い渡しは9月18日に延期された。 トランプ氏側はさらなる延期を求め、量刑の言い渡しは大統領選挙後の11月26日に再延期された。 ◆【刑事裁判(2)】機密文書を持ち出し 2021年に大統領を退任した際、アメリカの核計画に関する情報などが含まれる機密文書を、ホワイトハウスからフロリダ州の自宅に持ち出し、不正に保管していたとして、スパイ防止法違反や司法妨害などの罪に問われている。 フロリダ州の裁判所は5月20日に予定していた初公判を、準備が整っていないなどとして無期限で延期した。 ◆【刑事裁判(3)】大統領選の結果を覆そうと手続きを妨害 2020年の大統領選挙の結果を不正に覆そうとし、議会の手続きを妨害した罪などに問われている。検察はトランプ氏が「大統領選で敗北したにもかかわらず、権力の座にとどまろうと決断した」「陰謀の目的は、選挙結果の集計と承認をする政府の役割を妨害し、大統領選の正当な結果を覆すことだった」などと指摘している。 3月4日に予定されていた初公判は、免責特権に関する司法判断が確定していないため延期された。 ◆【刑事裁判(4)】ジョージア州選挙介入 2020年の大統領選挙の際、ジョージア州の選挙結果を覆そうと州政府に圧力をかけたとして、組織犯罪を規制する州法に違反する罪などに問われている。トランプ氏をはじめ、顧問弁護士だったジュリアーニ元ニューヨーク市長ら計19人が起訴された。